心理学ブログ

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ゲーム障害やネット依存などの依存を中心に、30代半ばの中堅公認心理師(臨床心理士)が心理学の知識や関連する話題などについて書いていきます

実態調査から考えるゲーム障害、ネット依存に対するカウンセリング

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ヤフーニュースを見ていたら、横浜市が小中学校の児童生徒を対象にゲーム障害・インターネット依存に関した実態調査を行ったとの記事がありました。

小中学生1割依存傾向「ゲームのことばかり考える」「ネットに夢中」(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

ヤフーニュースにはもちろん調査のほんの一部しか紹介されていないので、早速報告書そのものを読んでみましたので、その内容を紹介しつつ、カウンセラーとしての所感を書いていきたいと思います。

www.city.yokohama.lg.jp

横浜市立小中学校児童生徒に対するゲーム障害・ネット依存に関する実態調査

【調査の実施方法、調査対象】

 対象者は横浜市立の小・中学生 13,245 名。そのうち 4,164 名の回答が得られ、回収率31.4%。調査は、横浜市内 18 区でそれぞれ小学校、中学校1校ずつを抽出し、学校を通して児童生徒に依頼し、回収は郵送法によって行った。

【調査の結果】

ゲーム依存傾向の割合

  • 小学4年生から中学3年生全体でみると、ゲーム依存傾向のある児童生徒の割合は男子が16.6%、女子が7.9%
  • 女子よりも男子の方が高い傾向
  • 小学4年生、5年生で高くなる傾向

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ネット依存傾向の割合

  • 小学4年生から中学3年生全体でみると、ゲーム依存傾向のある児童生徒の割合は男子が11.1%、女子が9.2%
  • 男女とも中学2年生の割合が最も高い

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ゲーム依存傾向とゲーム、ネット利用状況、生活習慣、心の状態との関連

  • ゲーム使用時間、動画視聴時間が長く、フィルタリングが無い児童生徒ほど、ゲーム依存傾向の割合が高い。
  • 抑うつ症状が見られ、親にはいろいろ相談できると思わない、何でも話せる現実の友達がいると思わない、学校が楽しいと思わない、家ではホッとできると思わない、自分自身に満足していると思わない児童生徒ほど、ゲーム依存傾向の割合が高い。
  • ゲーム依存傾向は引きこもりや不登校との関連、親との関係悪化(特に父親)、抑うつ症状や注意欠如・多動症との関連が知られている。それらは、自己評価の低さや攻撃性、衝動性などとの関わりが見られる。

    ただしゲーム障害と攻撃性については「関連がある」とする先行研究と「関連がない」とする先行研究があるので注意が必要。

  • ゲーム依存傾向の予防及び回復においては「日頃から周りの人に相談できる関係づくり、学校が楽しいと思える居場所であること、家庭が安心できる場であること、自己肯定感がもてること」が大切。

  • ゲーム障害の予防及び回復には、ゲーム以外の活動を増やすことが大切。

  • ゲーム障害になると、ゲームをすることが楽しくてやっている(正の強化)というよりも、ゲームをやらないことの不快感から逃れるという負の強化でゲームを続けている可能性がある。

ネット依存傾向とゲーム、ネット利用状況、生活習慣、心の状態との関連

  • ゲーム使用時間、動画視聴時間が長く、フィルタリングが無い児童生徒ほど、ネット依存傾向の割合が高い。
  • 抑うつ症状があり、親にはいろいろ相談できると思わない、何でも話せる友達がいると思わない、学校が楽しいと思わない、家ではホッとできると思わない、自分自身に満足していると思わない児童生徒ほど、ネット依存傾向の割合が高い。

  • オンラインゲームの経験がある者やゲーム使用時間が長い者の方がネット依存傾向になりやすい。その一方で、動画の視聴時間やSNS利用時間が長いほどネット依存傾向になりやすい。

実態調査結果から考えられるゲーム障害、ネット依存に対してカウンセラーが思うこと

 このような大規模研究を行うには多大な時間と労力がかかります。その多大な時間と労力をかけて行われた調査の結果からゲーム障害やネット依存に対するカウンセリングに活用できることを考えてみました。

ご本人へのカウンセリング

  • 自己肯定感をもてる関わり

 ゲーム依存傾向の児童生徒には抑うつ症状が見られ、自分自身に満足していると思わないことが指摘されていて、ゲーム依存傾向の予防及び回復においては、自己肯定感がもてることの大切さが言われています。自己肯定感をもってもらえるように、ご本人の良い点やできている点のコンプリメントが、ゲーム依存傾向の児童生徒に関わる上では1つのポイントになりそうです。

  • 依存する要因の説明

 ゲーム依存やネット依存は自分がやりたいからやっていると、本人も思いがちですが、しかし、ゲームをやらないことの不快感から逃れるという負の強化でゲームを続けている可能性があることを知ると、本人も少し気が楽になるかもしれないと思いました。

ご家族へのカウンセリング

  • 依存する要因への理解を促す

 上でも書きましたが、ゲーム依存やネット依存は楽しいからしている、やりたいからやっていると家族も思いがちです。しかし、負の強化でゲームを続けている可能性があることを知ると、家族も子どもの見る目が変わるかもしれません。

  • フィルタリングやゲームの時間のルール決め

 これはすでに行っているご家族が多いとは思いますが、フィルタリングやゲームの使用時間をあらかじめ決めておくことが重要であるため、カウンセリングでもこの点についての説明が必要ですね。

  • ご家族の接し方

 ゲーム依存傾向の予防及び回復においては、「家庭が安心できる場であること」の重要性が指摘されています。子どもが安心できるような声かけ等について、ご家族と検討することも必要かもしれません。

まとめ

  • 横浜市が小中学校の児童生徒を対象に行ったゲーム障害・インターネット依存に関する実態調査についてまとめました
  • その実態調査の結果からカウンセリングで活用できそうなことを考えてみました

今回の内容に興味・関心を持たれた方は、良ければ、以下のサイトもご覧ください。

www.yamakioffice.com

CRAFTを含めたひきこもり支援の研修

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ある程度日にちが過ぎてしまいましたが、先日受講した研修が非常に勉強になったので、自分の備忘録と情報の共有のために久しぶりにブログを書きたいと思います。

日本心理臨床学会の「CRAFTを含めた”地域で取り組む”ひきこもり支援」というオンライン研修を受けました。

CRAFTは、Community reinforcement approach and family trainingの略語で、元々は物質使用障害(アルコールやドラッグ)の本人と家族への行動療法アプローチの1つです。それが、最近ではゲーム依存やひきこもりへの支援の方法としても広がっています。特にひきこもりへのCRAFTは日本独自の広がりを見せているようです。それだけ、ひきこもりが世界的に見て日本特有の、そして大きな問題となっているということですね。

研修の内容

今回の研修「CRAFTを含めた”地域で取り組む”ひきこもり支援」からもわかるように、CRAFTだけではなく、他の様々な方法を含めたひきこもり支援についての話がありました。

その人やその家族の状況やライフステージ、ニーズ等によって長期スパンで繋がり続けることを目的としたアプローチ

他のひきこもりに関する研修でも社会資源の話などは出てきますが、ソーシャルワーク的視点に力点を置いて話すのはちょっと珍しいですね。

  • 行動療法的アプローチ

家庭の状況、本人や家族の言動、その結果をオペラント条件付けの三項随伴性(応用行動分析)で説明をしていました。今までいくつものひきこもりの研修に参加したり、本を読んだりしてきましたが、ここまでわかりやすく端的に応用行動分析で説明しているのは初めてでした。

オペラント条件付けをごくごく簡単に説明すると、以下のようなことです。

・ある状況で、ある行動をした時に、報酬(強化子)が得られると、その行動を多くするようになる

・ある状況で、ある行動をした時に、罰(嫌子)が与えられると、その行動をすることが減る

この考え方を応用しながら、家庭の中で起こっている本人と家族の言動やひきこもりが維持されている要因をアセスメントし、親のどの行動を変化させ、強化子を呈示するのか説明されていました。

  • 家族療法的視点

講師の先生はおそらく上記の行動療法的視点で親子のコミュニケーションの連鎖を話していたのだろうと思いますが、その説明は聞きようによっては、家族のコミュニケーションを扱う、家族療法的視点のように聞こえたのは面白かったです。

著名な先生方は、心理療法の流派やオリエンテーションが異なってもやっていることや言っていることは共通していると言われますが、ひきこもりの支援の研修で、行動療法的アプローチと家族療法的アプローチの相似点が感じられたのは思いがけない収穫でした。

CRAFTを応用したひきこもりの家族支援

上記の内容が前半で、後半部分の多くはCRAFTを使った支援の話が中心でした。仮想事例を使って、本人への対応の悪い例とCRAFTを使った良い例を紹介し、それが応用行動分析的に見ると、何が強化子となり、何の行動を強化しているのか説明していました。

CRAFTとオペラント条件付け(応用行動分析)の基礎知識がないと研修の内容を理解するのはなかなか難しいと思われるほど、内容が濃かったです。

CRAFTと応用行動分析を組み合わせて使うと、アセスメントにも役立ちそうだし、ご家族への説明にも使えるような気がします。

もちろんそれは、ひきこもり支援ではなく、ゲーム依存やネット依存の子どもとそのご家族への支援にも非常に使いやすいと思います。あと、関係機関との情報共有や連携もしやすくなるのではないでしょうか。

まとめ

今回の研修で学べたことをまとめます

  • ひきこもり支援への多角的視点
  • 行動療法的アプローチと家族療法的アプローチの相似展
  • CRAFTと応用行動分析の組み合わせ

この記事を読んで、気になった方はこちらも併せてご覧ください。

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カウンセリングを申し込むタイミングは?

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 「カウンセリングっていつ受けたらいいんですか?」
このような質問をよくされます。
今、これを読んでいる人の中には、もしかしたらカウンセリングの申し込みを考えている人もいるかもしれません。
「カウンセリング受けた方がいいのかな」
「でも、まだカウンセリングを受けるほどでもないかもしれないし」
「こんな大したことない相談でもいいのかな?」
などと、思っているかもしれません。

そんな人のために、カウンセリングを申し込むタイミングについて書いていきます。

カウンセリングを申し込むタイミングはいつがいいの?

一言で端的に答えると、
カウンセリングを受けようかなとあなたが思った時
それが、カウンセリングを受けたらいいタイミングです。
でも、できるだけ状態が悪くなる前、状況が深刻になる前に、早めに受けた方が良いと思います。

カウンセリングを受けるタイミングは、カウンセリングを受ける目的によります。
カウンセリングを受ける目的を、タイミングを軸にすると、以下のように考えられます。

予防的目的

明らかに困ったり、問題が起こったりする前に、事前の備えのためにカウンセリングを受けます。
カウンセリングを実際に受ける人は、この後で書く1-2のタイミングの方が多いでしょう。

自分の状態を確認

例えて言えば、健康診断や歯科健診みたいな感じ

身体に問題がなくても1年に1回受けますよね。
コロナの影響でいつもよりだいぶ遅くなったのですが、ちょうどこの前、自分の職場で健康診断がありました。
また、住んでいる役所から歯科健診のお便りがきていました。無料で受けられるので行ってこようと思います。
健診の結果で、”異常なし”であれば、「自分は健康なんだ」という安心感に繋がりますよね。

会社であれば、1年に1回「ストレスチェック」が行われています。
詳しくは以下のサイトををチェック

ストレスチェック制度について|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
しかし、このストレスチェックは職場での高ストレス者を発見し、メンタルヘルス不調を未然に防ぎ、より働きやすく健康的な職場へと改善することを目指して行われるものです。
なので、職場以外でのストレスがある場合はあまりチェックできないです。

ネット上には、○○チェックリストといった、心理検査(心理テスト)が沢山あって、実際のカウンセリングでも使われている心理検査もあります。
それであれば自分の状態をチェックできますが、その一方で、血液型診断みたいなものもありますので、ご注意ください。

健診的な目的でカウンセリングを受けることがもっと広がったら良いなと思います。
もしカウンセリングが継続的に必要だったとしても、早期発見・早期支援ができますから。

対処に備える

例えて言えば、フィットネスジム(スポーツジム)に通って、筋トレやストレッチをして病気になりにくい体を作る感じ。
フィットネスジムやヨガスタジオって流行っていますよね。
身体疾患の予防に関しては、自分自身で探して、お金や時間をかけて行いますよね。
そんな感じで、メンタルヘルスに関しても予防の観点が認知されていくといいのになと思います。

〇予防のための具体例

身体の病気やケガの予防のためにジムで運動したり、ランニングしたりするのはイメージしやすいですが、メンタルヘルスの予防と言われて、イメージできますか?

予防のための方法の1つとして、自身のコーピングリストの作成が考えられます。

sinri-psychology.hatenablog.com ・すでに自分が行っているコーピング(対処行動)をたくさんリストにしておく
・コーピングを試し、このストレスには、このコーピングが効果があると確かめておく
・新たなストレスが発生した時に、コーピングリストの中からコーピングを選び、試してみる
・ストレスが解消されたか確かめてみる

具合が悪くなってから、対処の方法を考えるのは大変なので、事前に対処方法を備蓄しておけると、いざという時に役に立ちます。

対処目的

明らかに困ったり、問題が起きている時に、対処方法などを相談するためにカウンセリングを受けます。
実際に困ったり、何らかの問題が起きた時に、それをどうにかしたくてカウンセリングに申し込む人の方が多いです。

このタイミングでカウンセリングを申し込まれた場合は、状況をお伺いしながら、一緒に対処方法などを検討していくことが多いです。
おそらく皆さんがイメージするカウンセリングは、これに当てはまると思います。

フォローアップ目的

例えて言えば、術後の経過観察のような感じ。
問題が解決されたり、対処できるようになった状態が継続しているかを確認するためのカウンセリングです。
例えば、起きていた問題は解決したり、対処できるようになったが、また同じようなことが起こった場合に備えておく必要があります。
その場合、問題を解決した方法やそのために使ったリソース(資源)などを振り返り、同じようなことが起こった時に、それらを使えるようにしておきます。

まとめ

・カウンセリングを申し込んだ方がいいのかなと思った時が、申し込むタイミング
・カウンセリングを申し込むタイミングでできるだけ早い方がいい
・カウンセリングを受ける目的(予防、対処、フォローアップ)によって、受けるタイミングは異なる

この記事を読んで、気になった方はこちらも併せてご覧ください。

www.yamakioffice.com

オンライン研修だからこそできるコーピングレパートリー・バンク

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前回の記事に引き続き、今回もオンライン研修会へ参加しました。
今回参加したのは、「withコロナにおける コーピングレパートリー・バンク#1
withコロナにおける コーピングレパートリー・バンク #1 | Peatix

今回参加したオンライン研修会の感想と、今回作成されたコーピングレパートリーの個人的使用方法(セルフケアや臨床)を書いていきたいと思います。

オンライン研修会の目的

主催者側の目的

withコロナということで、人々の行動レパートリーの幅が狭まらざるを得なくなっています。
せっかく空いた時間があっても、中々休みの取れなかった我々ですから、どう使って良いのかうまくわかりません。

心理カウンセリングの用語で言えば、これまでできていたような楽しみ(行動レパートリー)や、ストレス対処(コーピング)に支障をきたしている状態なのです。

このような状態なので、多くの人からのコーピングを募り、コーピングレパートリーバンクを作成する目的で、このオンライン研修会が行われたようです。

参加者側の目的

参加者の人がどのようなコーピングをしているのか、どのようなコーピングがあるのかを知ることと、コーピングレパートリーの臨床での活用方法を知りたいと思い、参加しました。

オンライン研修 コーピングレーパートリーバンクのやり方

今回のオンライン研修は以下のような流れで行われました。

コーピングとは?

まず、2人の講師の先生から、コーピングについての基本的な講義がありました。

コーピングサイコロ
伊藤絵美先生がコーピングサイコロの作成方法を紹介していました。
コーピングリストを作成しても、どのコーピングを行うか選べない、踏み切れない場合にサイコロを振って出た目のコーピングを行うようです。
コーピングサイコロの作り方は以下のサイトをご覧ください
https://www.stress-coping.com/

コーピングについては、一応以前の記事に書いているので、それも併せて見てみてください。

sinri-psychology.hatenablog.com

参加者とコーピングレパートリーの案出

落ち込んだ時に役に立ったコーピングは?など、いくつかのお題に対して参加者がそれぞれのコーピングを出していき、それに対して2人の先生があれやこれやとお話していきました。

参加者から出されたコーピングは「mentimeter」を使って、リアルタイムに見ることができました。
この機能を使うことによって、講師の先生は参加者からリアルタイムで出されたコーピングを見て、解説や意見、質問ができ、参加者も先生からのコメントを踏まえてさらにコーピングを出していました。

オンライン研修会の感想

コーピングの幅広さを知った

コーピングは意図的に行っていて、結果的に効果があれば、すべてがコーピングです。参加者の方々からの意見を見て、「それもコーピングか!?」、「そんなこともしているんだ!?」と驚きました。
詳しい内容を見たい方は、こちらからダウンロードすることができます。
https://cbtcenter.jp/blog/?itemid=2555

オンライン研修会と今までの研修会との違い

今回のオンライン研修会では、mentimeterという機能を使って、参加者からのリアルタイムでの反応を拾い上げて、講師が話し、それを受けて、また参加者が反応を返すという双方向なやり取りをとても感じられました。
これは今までの研修会ではできず、オンライン研修会だからこそできるやり方だと思います。今後はこのようなやり方での研修会が増えてくるのではないかと思います。

講師の先生の反応、聞き方

お二人の講師の先生がどんなコーピングでも、「いいですね」、「私もやってます」と、肯定的に捉えているのが印象的で、ソリューション・フォーカスト・アプローチ(SFA)で、例外やリソースを聞いている時と似ているなと感じました。
きっと実際のカウンセリング場面でもこんなふうにして聞いているんだろうなぁと、それこそ妄想的認知をしていました。

コーピングレパートリーの活用方法

自分のストレスマネジメントへの活用

コーピングはたくさんある方が、ストレスに対処できるけど、自分が思いつくコーピングには限界があるので、他の方々のコーピングを聞き、試してみようと思ったものは自分のコーピングリストに加えようかな。

行動的コーピングは思いつくし、実践もできるけど、認知的コーピングは自分が何気なくやっていることだと気づきにくかったり、新しいことを思いつかなかったりするので、他の方々の認知的コーピングから学ぶことが多かったです。

コーピングレパートリーの臨床的活用

ダウンロードできる「コーピング・レパートリー バンク ina ver.1.03」は、あまりにもコーピングの数が多いので、これをそのまま使用するのはちょっと難しいかな。
例えば、なかなか自分のすでにやっているコーピングが出てこない方に、今回のコーピングレパートリー・バンクを見せて、その中から自分もやっているコーピングを選んでもらうとかはいいかもしれない。

他にも、「こういうのもコーピングなんですよ」、「例えば、こういうことをコーピングとしてやっている人もいるんですよ」と、例として提示することはできるかな。
自分の行動の方に焦点が行きやすい傾向の方もいるので、そういう人には特に、認知的コーピングの例として出すのはいいかもしれない。

要するに、今回の研修会で学んだことを活用して試してみて、その結果、効果があれば、それも新しいコーピングということですよね。
今回の研修のタイトルが「withコロナにおける コーピングレパートリー・バンク#1」と、最後に#1とついているので、2回目があることを期待したいと思います。

まとめ

・オンライン研修会だからこそできるやり方がある
・意図的に行い、効果があれば何でもコーピング
・自分のストレスマネジメントにも、臨床場面にも活用できそう

オンライン研修会 心のサポートWEB研修・情報交換会

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今までのいくつかの記事にも書いていますが、新型コロナウイルス感染防止のため、様々な研修が中止になっています。

sinri-psychology.hatenablog.com
その代わりにオンラインでの研修会や講習会が開催されるようになりました。
今回のオンライン研修会に参加した感想と、オンラインで研修会に参加することのメリットやデメリットについて書きたいと思います。

【第三弾】COVID-19 心のサポートWEB研修・情報交換会

今回はアジア災害トラウマ学会の【第三弾】COVID-19 心のサポートWEB研修・情報交換会に参加しました。
先月4月26日に第二弾があり、それに続いて2回目の参加でした。
しかも、前回も今回も参加費は無料!

アジア災害トラウマ学会とは

アジア災害トラウマ学会は、ホームページで以下のように紹介しています。

アジア各国からの実践活動報告,被災者の発表,基礎研究発表、さらに各国独自のトラウマ治療理論や危機介入技術の紹介などを通して、アジアにマッチした「災害後のこころのケア」を創造していく国際学術団体です。

https://www.asdt.net/about

研修会の目的

今回のオンライン研修会は以下の目的で行われました。

第三回では、医療・教育・福祉の三分野から、これまでの緊急事態宣言下での実践、現場で感じておられること、また6月以降に活用できる知見や実践をご紹介いただき、皆様と共有する機会を得ることができればと思っております。
ぜひ多くの方にご参加いただき、先の見えない事態においても、全国に仲間がいることを感じ、知恵や情報を通わせながら、励ましあって歩む機会になればと願っております。

研修内で出された個別の事例や実践については、守秘義務がありますので、ここでは参加して感じた個人的感想を書いていきたいと思います。
内容については、後日HP上にアップされるかもしれませんので、そちらをチェックしてください。

ちなみに、先月行われた【第二弾】COVID-19心のサポートWEB研修・情報交換会のまとめ、当日使用された資料がアップされています。
こちらも良かったらご覧ください。

https://www.asdt.net/post/20200429

今回の研修会に参加した感想

・各分野での新型コロナ感染症に関する心理的支援の活動が知れた
今回は、医療、教育、福祉の分野の先生方が、それぞれの分野での活動を報告してくださいました。
なかなか他の方々が、どのような心理的支援を行っているのかを普段知れないので、今回の研修会は非常に勉強になりました。
様々な心理的支援の方法を知り、取り入れられるものはぜひ取り入れていきたいと思います。

・興味、関心を持っている心理支援専門職の方々が大勢いることが知れて刺激になった
今回は400人近い人が参加していたようです。
こんなに多くの心理支援の専門家が興味・関心を持って参加していることは非常に刺激になりました。
興味・関心を持っている方々なので、チャットでのやり取りも活発で、いろんな情報を知ることが出来ました。
このようにチャットでいろいろな人達とやり取りができるのはオンラインならではですね。

オンライン研修会のメリット、デメリット

今までに参加したオンライン研修会も含めて個人的に感じた、メリットとデメリットを以下に挙げます。

オンライン研修会のメリット

・質問しやすい、意見を言いやすい
実際の研修では、質問したいことがあったとしても、場合によっては元々決められた時間までは質問ができないことがあります。
オンライン研修会では、質問があれば、その場でチャットに送ることが出来ます。
しかも、その質問に対して普通であれば講師の先生しか答えないですが、チャットの場合だと他の人も答えることが出来るので、他の人の意見や情報も知ることが出来るのは大きな利点だと思います。

・移動時間、移動費の削減
研修会場までの移動時間が削減できます。
参加してみたい研修会があっても場所が遠くて断念した経験は皆さんあると思いますが、オンライン研修会ではそういうことがありません。
また、移動費が一切かからないため、特に学生は参加しやすくなると思います。

・参加費が安くすむ
オンライン研修会の場合、実際に会う研修会に比べると値段が安いことが多いです。
その理由としては、会場費がかからない又は安くてすむからだと思います。
また講師を外部の人にお願いする場合、講師料の他に移動費や宿泊費などもかかりますが、オンラインであればそれらのなくてすむため、その分安くできるのだと思います。

・様々な地域の講師、参加者が参加しやすい
移動時間や移動費がかからないため、例えば、海外にいる方に講師をお願いすることも比較的しやすくなります。
また、参加者も国外にいる人も参加しやすくなります。そのため、例えば、北海道ではこういうふうにやってます、沖縄ではこういうふうにやってます、アメリカではこうやってますというのが、講師や参加者から情報共有しやすくなります。

オンライン研修会のデメリット

・講義型になりやすい
ロールプレイやグループワークなどのワークショップ型の研修会はしにくいので、研修会のやり方が講義型に限られてしまいます。
参加者がワークをやって、講師からフィードバックを受けることがしにくく、講師が一方向的に伝える形になりやすいです。

・通信環境の制限を受ける
通信環境が良くないと止まってしまって、時間を無駄にしてしまったり、講師の話が聞きにくかったりといったことがあります。
また、動画と音声にラグが発生して、講師の表情と言葉がずれることで、微妙なニュアンスが伝わりにくいといったこともあります。

・集中力の維持が難しい
今までの研修会では一つの場所に同じ目的で集まった人がいることで集中力やモチベーションが維持されやすかったですが、家で一人で聞いていると、誰の目もなく、怠けてしまえる環境であるため、集中力を維持するのが大変になります。

・インフォーマルな交流がしにくい
講師に質問するほどではないが、参加者と共有したいことなどは、休憩時間やお昼休みなどの時に話ができましたが、オンライン研修会ではそれがしにくいです。

・地方研修会ならではの楽しみができない
地方研修会に行くと、その土地の物を食べたり、飲んだりすることが楽しみな人もいるでしょう(そちらが主の目的になっている人もいるかもしれませんが)。
お土産を買ったり、観光名所を観に行くといった楽しみも出来なくなります。

まとめ

今回は、アジア災害トラウマ学会【第三弾】COVID-19 心のサポートWEB研修・情報交換会に参加した感想と、オンライン研修会のメリット、デメリットについて書きました。

・新型コロナ感染症に関する心理的支援の実際が知れた
・オンライン研修には、質問しやすい、費用や移動時間の面から参加しやすくなるなどのメリットがある
・その一方で、講義型になりやすい、通信環境の影響、集中力の維持の難しさなどのデメリットがある

緊急事態宣言が全国で解除され、少しずつ休業要請も緩和されつつあります。
この状況が続けば、実際に集まる研修会も少しずつ開催されていくかもしれませんが、しかし、いつ第2波、第3波が来て、再び実際に集まる研修会が出来なくなるかわかりません。そのため、今後、新しい研修様式が作られてくるのではないかと思います。

インターネット依存・ゲーム障害への心理支援②

研修会の中止

 以前の記事で、「インターネット依存・ゲーム障害への心理支援」が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染防止の観点から実施が見送られましたことは書きましたが、6月7日(日)に開催予定であった明治安田生命こころの健康財団「子ども・子育てフォーラム−インターネット依存症 予防と支援−」も中止になってしまいました

 この研修は日本のインターネット依存やゲーム障害の先駆的病院である久里浜医療センターから、心理の先生が講演されるので非常に楽しみにしていたので中止になってとても残念です(しかも参加費がなんと無料だったのに!)

 このコロナ禍により研修会の中止が相次ぎ学ぶ機会が減ってしまっているのが残念です。自分なりに調べてまとめ、アウトプットすることで学習の機会にしたいと思います。

ゲーム障害の定義のおさらい

 #6インターネット依存・ゲーム障害への心理支援では、主にゲーム障害の症状や特徴、診断基準についてお伝えしました。

 ゲーム障害の定義は主に以下の3点です。
・ゲームのコントロールができない(やめられない)
・他の生活よりもゲームが優先される
・ゲームを続けることにより、自分や周囲に支障が出ている
より詳細な内容を知りたい人は以前の記事をご覧ください。

sinri-psychology.hatenablog.com

ゲーム障害とは?実態や対応方法について

 コロナ休校により子どもは学校に行けず、ずっと家にいる生活が続いています。それによりゲームやインターネットをする時間が増え、学校が再開されても学校に行けない子が増えるのではないかと懸念されています。
 そのようなことが懸念されてる時期ですので、保護者や家族、教育関係者や子どもを支援する支援者のために、ゲーム障害の実態や予防、対応方法についてまとめていきます。

ゲーム障害の実態

 ネット依存を疑われる中学・高校生の割合は2012年から2017年の間に増加しており、中高生全体では14.2%がネット依存が疑われる状態でした。
 この結果から、ネット依存の推計値は52万人(2012年)⇒93万人(2017年)に増加していると推計されています

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厚生労働省「ゲーム依存症対策関係者会議」資料2「ゲーム障害について」

ゲーム障害の兆候

 ゲーム障害は早めに対処することが大切です。早めに対処するためには兆候を知り、見過ごさないようにしましょう。ゲーム障害の兆候としては、以下のことが言われています。

  • ゲームの時間が長くなる
  • 夜中まで続ける
  • 朝起きられない、学校や会社に遅刻しそうになる(遅刻する)
  • ゲームのことを気にする
  • ほかのことへ興味を示さなくなる
  • ゲームのことを注意すると激しく怒る
  • ゲームができないと、いらいらしたり、不安になる

 これらの兆候のいくつかに当てはまる時は、注意しましょう。注意してゲームの時間が減ることもあります。減らない場合は専門家への相談を検討しましょう。

 また、ネット依存かどうかを見る1つのツールとして、スクリーニングテストがあります。これだけでネット依存かどうかを判断するわけではありませんが、1つの目安になるでしょう。

依存症スクリーニングテスト一覧 | 病院のご案内 | 久里浜医療センター

ゲーム障害への対応方法

ゲーム障害への対応方法①ゲーム、スマホ、ネットの使用制限、②その他の活動での充足に分けられます

①ゲーム、スマホ、ネットの使用制限

(1)ゲーム、スマホ、ネットの使用開始を遅らせる

 習慣的な使用が早いほど、その後の使用時間が長いということが指摘されているため、なるべく使用開始を遅らせる。

(2)ゲーム、スマホ、ネットの使用時間を短くさせる

 使用時間が短く、生活に支障のない範囲で使用している分には問題がないため、適切な使用時間内に収めることが大切です。しかし、子どもの使用時間を親が常に見張っているわけにはいきません。
 各ゲーム会社が、子どもの長時間の使用を抑制するために、各種のツールや設定がありますので、以下にまとめます。
※この情報は2020年5月23日現在のものです。詳細は必ず各社HPから最新の情報を確認してください。 

Newニンテンドー3DS LL

 Newニンテンドー3DS LLには、【保護者による制限機能】というものがあります。 

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【Nintendo HP ニンテンドー3DSの「保護者による使用制限機能」について】より引用

 取扱説明書の【保護者による制限】のページには、制限できることが以下の11項目書かれています。

https://www.nintendo.co.jp/support/3ds/pdf/new3ds_manual.pdf

 オレンジ色にしてある欄が主にゲーム障害、ネット依存の対策として重要な項目です。しかし、ニンテンドーeショップ等での商品やサービスの購入以外の3項目はゲームというよりはネットの制限です。
 ニンテンドーeショップの制限も新たなゲームソフトの購入は制限できますが、すでに購入しているソフトのゲームを制限することはできません。 

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 Newニンテンドー3DS LLにおける時間の制限について

 Newニンテンドー3DS LLには、ゲームの使用時間そのものを制限する機能はありません。
 思い出きろく帳という機能で各ソフトのゲーム時間を把握することはできます。使用時間をルールとして決めた場合、そのルールを守れているかどうかを確認する時に使えます。
 キッチンタイマーなどで子供にも、ゲームの使用時間を把握させ、アラームが鳴ったらゲームをやめるという習慣をつけさせることが重要です。

 

Nintendo Switch

 Nintendo Switchには、【みまもり設定(保護者による使用制限】という機能があります。

みまもり設定(保護者による使用制限)|Nintendo Switch サポート情報|Nintendo

 ニンテンドー3DSと最も異なる点は、事前に決められたゲームの使用時間を過ぎると、親がゲームを中断させられることです(オレンジ色の欄)

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 親がゲームを中断させるためには、NintendoみまもりSwitchというスマートフォンアプリを入れて、1日に遊ぶ時間を設定する必要があります(各曜日ごとに設定できます)。


PlayStation4

 PlayStation4にも、Nintendo Switch同様に遊ぶ時間の制限ができる機能があります。それ以外の制限については、Nintendo SwitchNewニンテンドー3DS LLとそれほど大きな差はありません。

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遊ぶ時間の制限
 遊ぶ制限時間は曜日ごとに設定することもできます。設定した制限時間になると画面にお知らせがポップアップで繰り返し表示されます。時間を過ぎた場合に自動でログアウトさせることもできます。 

(2)ルールを決める

1. なるべくゲーム購入前に決める。
2. 使用時間・場所・金額を決める。
3. ルールを守れなかった時の罰則も決める。
4. ルールや罰則を書面に残す。 

 ルールは親が一方的に押し付けるのではなく、子どもと一緒に話し合って決めることが大事です。また、子どもの年齢や状況に応じてルールはその都度変更可能です。各家庭の実情に合わせて、必要があれば話し合って変更していきましょう。
 ルールを決めたら、それで終わりではなく、そのルールを守ってゲームを使用できるようにすることが必要です。時々子どもとルールを書いた紙を読むのもいいでしょう。

まとめ

 今回は、主に以下の内容を書きました。
・ゲーム障害への対応方法のうち、①ゲーム、スマホ、ネットの使用制限
・その中でも、主に携帯ゲーム機のゲーム使用時間などの機能制限
・ゲーム使用のルールは子供と親が一緒に作ることが大事

②その他の活動での充足や、カウンセリングでできることについては、また別の機会に書こうと思います。

 

参考文献 

ゲーム依存症対策関係者会議 資料1-3

 厚生労働省が2月6日に、ゲーム依存症対策関係者連絡会議の初会合を都内で開催しました。
 この連絡会議には経済産業省内閣府など関係府省の課長級に加え、オンラインゲームの業界団体や医療関係者らが参加し、実態把握や対策の在り方を検討しました。
 非常によくまとまっていますし、国や厚生労働省の考え、今後の支援の方向性が分かるので、特に学校関係者や支援をする側の人は一読してみてはいかがでしょうか。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000202961_00004.html

 

こちらにもゲーム依存について書いています。合わせてご覧ください。

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オンラインカウンセリング始めました

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 緊急事態宣言により対面カウンセリングを一時中止していました(5月7日から再開)。このコロナ禍による外出自粛はおそらくある程度継続していくのではないでしょうか。
 このような状況下ですので外出せずにカウンセリングが受けられるように、当オフィスではオンラインカウンセリングを始めました

 オンラインカウンセリングと聞くと、あなたはどのような印象を持ちますか?
移動がない分ラク、直接会うより気軽に申し込めそうと良い印象を持つ人もいれば、直接話すのに比べると話しにくそう、カウンセリングって直接会って話すから大事なんじゃないの?と、少し抵抗感がある人もいると思います。
ですが、オンラインカウンセリングを始めてみてのあくまでも個人的な感想としては、対面カウンセリングとは異なるという点ももちろんありますが、思っていたよりも対面でのカウンセリングと変わらないなという実感です。

オンラインカウンセリングは対面カウンセリングとは違う?

 上記にも書きましたが、カウンセリングを受けようかと考えている人の中には、このコロナ禍で外出することが出来ない人もいます。

例えば、

・会社から自宅待機を命じられている
・リモートワークになって、いつ会社から電話がかかってくるかわからない
・子どもや家族が、学校休校、在宅勤務になって家にいるから出られない
・カウンセリングオフィスまでの移動によって新型コロナに感染するのが怖い

 このような人達にはオンラインカウンセリングというのは非常に便利なツールになります。
 しかし、オンラインでのカウンセリングだと、実際に会って行うカウンセリングと違うのではないか、話しにくいんじゃないかと思って、カウンセリングを受けるハードルがさらに上がって、カウンセリングへの申し込みを躊躇している人も少なくないでしょう(そもそもカウンセリングを申し込むことへの心理的ハードルが高いと言われています)
 また、オンラインカウンセリングに申し込んでもらうハードルを上げている要因はカウンセラー側にもあるのかもしれません。
オンラインカウンセリングが多くのところで始められたことで、様々な形でカウンセリングの対面とオンラインという形態の違いによるメリット・デメリットが情報発信されるようになりました。
 その中でも、対面でのカウンセリングに比べて、オンラインカウンセリングでは非言語コミュニケーションの情報が少なくなってしまう(変わってしまう)ことが言われています。
具体的には、

  • カメラの画角の範囲しか見えない
  • カメラやディスプレイの性能によっては表情やしぐさが見にくい
  • マイクやスピーカーの性能によっては声の聞こえ方が変わってしまう
  • 声の大きさをPCの音量で変えられてしまう

 非言語コミュニケーションとは、言葉以外の手段により行われるコミュニケーションの事です。
五感に分けて説明すると、
・視覚:表情、顔色、視線、まばたき、明るさ
・嗅覚:香り、におい
・味覚:味
・触覚(身体):うなずき、ジェスチャー、しぐさ(腕や足を組む、髪やあごを触る)、呼吸、握手、温度、湿度 
・聴覚:声のトーン、大きさ、明瞭さ、抑揚、声質
・五感以外:服装、化粧、アクセサリー、距離感、位置関係

 例えば、PCのディスプレイの明るさや色味の設定を変えると、顔色が変わって見えますし、音量を大きくすれば、小さな声で話していたとしても大きく聞こえます。
 この点は非常に重要な点で、どうしても対面カウンセリングに比べると損なわれるところではあります。しかし、このようなデメリットの強調によって、カウンセリング申し込みへのハードルが上がってしまっているのであれば、それはもったいない気がします。

オンラインカウンセリングを最近始めたカウンセラーの実感

 一言で言うと、思っていたよりも対面でのカウンセリングと変わらないな、より正確に言うと、対面カウンセリングとは異なる部分もあるけど、オンラインカウンセリングとしての良さがあるだろうというのが、これまでの実感です。主な実感は以下の3点です。

①画面に見えている部分に集中できる

 当オフィスは面接室が3部屋あり、椅子とテーブルのお部屋と、ソファのお部屋があります。面接室の様子はこちらをご覧ください。
相談室内のご案内 やまき心理臨床オフィス 
 ソファの部屋の場合、座っているほぼ全身が見えます。しかし、オンラインカウンセリングだと、ほとんどの場合、上半身しか見えません。人によっては肩くらいまでしか見えない人もいます。手も下げていると見えないことが多いです。
 姿勢やボディランゲージといった体の動きも非言語コミュニケーションの大切な一部なので、見えないことはデメリットにもなります。しかし、見えない部分があるからこそ、PCの画面に見えているクライアントの表情により集中できるという側面があるように感じます。
 ”見えていないもの”をいくら気にしても見えるようにはなりません。”見えていないもの”があるからこそ、見えている部分をより見ようとするという良い面もあります(もちろん、見えていないものがあるという認識を忘れないことが大切です)

②どのように見えているかにより意識がいく

 身振り手振りで説明する時は、画面を通してみることを意識してよりわかりやすい表現を考えるようになります。

③聴くことをより意識する

 マイクやスピーカー、通信環境が良ければかなりクリアに声は聞こえますが、それでもやっぱり生の声とは異なります。そのため、いつもよりも聴くことに意識がいきます。

 気を付けないといけない点

 やはりオンラインカウンセリングには対面カウンセリングにはない、気を付けないといけない点がいくつかあります。
 これらのことをしっかりと意識しながら、オンラインカウンセリングを行うことが重要です。

お互いの使用機器 

 マイク、カメラ、ディスプレイ、通信環境などによって、見え方や聞こえ方が大きく変わってしまいます。

今までであれば、

カウンセラーの声⇒クライアントの耳

と届いていた声が

カウンセラーの声⇒カウンセラー側のマイク⇒クライアント側のスピーカー⇒クライアントの耳

と届くことになります
対面のカウンセリングにはなかった、聞こえ方に影響する要因が多くあるため、それらを知っておくことが大切です。

部屋の環境

 自宅にいて話す方がリラックスできて話しやすい側面もあるかもしれませんが、当オフィスまで来て、オフィスの面接室で話す内容とは異なるかもしれません。視界に入るものが自分の部屋だと、ふと目に入ったものに影響されて話すことが変わることもあるかもしれません。

ツールの準備

 パソコンを立ち上げたり、使う通話ツール(Zoom、Google Meet、Skype等々)によっては事前にダウンロードが必要なものもあります。初めて使う時は「ちゃんと繋がるだろうか」という心配もあるかもしれません。

今回のまとめ

  • 対面カウンセリングとオンラインカウンセリングには異なる点がある
  • 異なる点を意識しながら行うことが重要
  • 自宅にいながらカウンセリングを受けられる点が最大のメリット

 対面カウンセリングとは異なる部分ももちろんありますが、このような状況ですので、カウンセリングを受けたりけど、移動して行くのはちょっと・・・、という方はオンラインカウンセリングをお申し込みください。

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