心理学ブログ

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ゲーム障害やネット依存などの依存を中心に、30代半ばの中堅公認心理師(臨床心理士)が心理学の知識や関連する話題などについて書いていきます

インターネット依存・ゲーム障害への心理支援②

研修会の中止

 以前の記事で、「インターネット依存・ゲーム障害への心理支援」が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染防止の観点から実施が見送られましたことは書きましたが、6月7日(日)に開催予定であった明治安田生命こころの健康財団「子ども・子育てフォーラム−インターネット依存症 予防と支援−」も中止になってしまいました

 この研修は日本のインターネット依存やゲーム障害の先駆的病院である久里浜医療センターから、心理の先生が講演されるので非常に楽しみにしていたので中止になってとても残念です(しかも参加費がなんと無料だったのに!)

 このコロナ禍により研修会の中止が相次ぎ学ぶ機会が減ってしまっているのが残念です。自分なりに調べてまとめ、アウトプットすることで学習の機会にしたいと思います。

ゲーム障害の定義のおさらい

 #6インターネット依存・ゲーム障害への心理支援では、主にゲーム障害の症状や特徴、診断基準についてお伝えしました。

 ゲーム障害の定義は主に以下の3点です。
・ゲームのコントロールができない(やめられない)
・他の生活よりもゲームが優先される
・ゲームを続けることにより、自分や周囲に支障が出ている
より詳細な内容を知りたい人は以前の記事をご覧ください。

sinri-psychology.hatenablog.com

ゲーム障害とは?実態や対応方法について

 コロナ休校により子どもは学校に行けず、ずっと家にいる生活が続いています。それによりゲームやインターネットをする時間が増え、学校が再開されても学校に行けない子が増えるのではないかと懸念されています。
 そのようなことが懸念されてる時期ですので、保護者や家族、教育関係者や子どもを支援する支援者のために、ゲーム障害の実態や予防、対応方法についてまとめていきます。

ゲーム障害の実態

 ネット依存を疑われる中学・高校生の割合は2012年から2017年の間に増加しており、中高生全体では14.2%がネット依存が疑われる状態でした。
 この結果から、ネット依存の推計値は52万人(2012年)⇒93万人(2017年)に増加していると推計されています

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厚生労働省「ゲーム依存症対策関係者会議」資料2「ゲーム障害について」

ゲーム障害の兆候

 ゲーム障害は早めに対処することが大切です。早めに対処するためには兆候を知り、見過ごさないようにしましょう。ゲーム障害の兆候としては、以下のことが言われています。

  • ゲームの時間が長くなる
  • 夜中まで続ける
  • 朝起きられない、学校や会社に遅刻しそうになる(遅刻する)
  • ゲームのことを気にする
  • ほかのことへ興味を示さなくなる
  • ゲームのことを注意すると激しく怒る
  • ゲームができないと、いらいらしたり、不安になる

 これらの兆候のいくつかに当てはまる時は、注意しましょう。注意してゲームの時間が減ることもあります。減らない場合は専門家への相談を検討しましょう。

 また、ネット依存かどうかを見る1つのツールとして、スクリーニングテストがあります。これだけでネット依存かどうかを判断するわけではありませんが、1つの目安になるでしょう。

依存症スクリーニングテスト一覧 | 病院のご案内 | 久里浜医療センター

ゲーム障害への対応方法

ゲーム障害への対応方法①ゲーム、スマホ、ネットの使用制限、②その他の活動での充足に分けられます

①ゲーム、スマホ、ネットの使用制限

(1)ゲーム、スマホ、ネットの使用開始を遅らせる

 習慣的な使用が早いほど、その後の使用時間が長いということが指摘されているため、なるべく使用開始を遅らせる。

(2)ゲーム、スマホ、ネットの使用時間を短くさせる

 使用時間が短く、生活に支障のない範囲で使用している分には問題がないため、適切な使用時間内に収めることが大切です。しかし、子どもの使用時間を親が常に見張っているわけにはいきません。
 各ゲーム会社が、子どもの長時間の使用を抑制するために、各種のツールや設定がありますので、以下にまとめます。
※この情報は2020年5月23日現在のものです。詳細は必ず各社HPから最新の情報を確認してください。 

Newニンテンドー3DS LL

 Newニンテンドー3DS LLには、【保護者による制限機能】というものがあります。 

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【Nintendo HP ニンテンドー3DSの「保護者による使用制限機能」について】より引用

 取扱説明書の【保護者による制限】のページには、制限できることが以下の11項目書かれています。

https://www.nintendo.co.jp/support/3ds/pdf/new3ds_manual.pdf

 オレンジ色にしてある欄が主にゲーム障害、ネット依存の対策として重要な項目です。しかし、ニンテンドーeショップ等での商品やサービスの購入以外の3項目はゲームというよりはネットの制限です。
 ニンテンドーeショップの制限も新たなゲームソフトの購入は制限できますが、すでに購入しているソフトのゲームを制限することはできません。 

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 Newニンテンドー3DS LLにおける時間の制限について

 Newニンテンドー3DS LLには、ゲームの使用時間そのものを制限する機能はありません。
 思い出きろく帳という機能で各ソフトのゲーム時間を把握することはできます。使用時間をルールとして決めた場合、そのルールを守れているかどうかを確認する時に使えます。
 キッチンタイマーなどで子供にも、ゲームの使用時間を把握させ、アラームが鳴ったらゲームをやめるという習慣をつけさせることが重要です。

 

Nintendo Switch

 Nintendo Switchには、【みまもり設定(保護者による使用制限】という機能があります。

みまもり設定(保護者による使用制限)|Nintendo Switch サポート情報|Nintendo

 ニンテンドー3DSと最も異なる点は、事前に決められたゲームの使用時間を過ぎると、親がゲームを中断させられることです(オレンジ色の欄)

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 親がゲームを中断させるためには、NintendoみまもりSwitchというスマートフォンアプリを入れて、1日に遊ぶ時間を設定する必要があります(各曜日ごとに設定できます)。


PlayStation4

 PlayStation4にも、Nintendo Switch同様に遊ぶ時間の制限ができる機能があります。それ以外の制限については、Nintendo SwitchNewニンテンドー3DS LLとそれほど大きな差はありません。

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遊ぶ時間の制限
 遊ぶ制限時間は曜日ごとに設定することもできます。設定した制限時間になると画面にお知らせがポップアップで繰り返し表示されます。時間を過ぎた場合に自動でログアウトさせることもできます。 

(2)ルールを決める

1. なるべくゲーム購入前に決める。
2. 使用時間・場所・金額を決める。
3. ルールを守れなかった時の罰則も決める。
4. ルールや罰則を書面に残す。 

 ルールは親が一方的に押し付けるのではなく、子どもと一緒に話し合って決めることが大事です。また、子どもの年齢や状況に応じてルールはその都度変更可能です。各家庭の実情に合わせて、必要があれば話し合って変更していきましょう。
 ルールを決めたら、それで終わりではなく、そのルールを守ってゲームを使用できるようにすることが必要です。時々子どもとルールを書いた紙を読むのもいいでしょう。

まとめ

 今回は、主に以下の内容を書きました。
・ゲーム障害への対応方法のうち、①ゲーム、スマホ、ネットの使用制限
・その中でも、主に携帯ゲーム機のゲーム使用時間などの機能制限
・ゲーム使用のルールは子供と親が一緒に作ることが大事

②その他の活動での充足や、カウンセリングでできることについては、また別の機会に書こうと思います。

 

参考文献 

ゲーム依存症対策関係者会議 資料1-3

 厚生労働省が2月6日に、ゲーム依存症対策関係者連絡会議の初会合を都内で開催しました。
 この連絡会議には経済産業省内閣府など関係府省の課長級に加え、オンラインゲームの業界団体や医療関係者らが参加し、実態把握や対策の在り方を検討しました。
 非常によくまとまっていますし、国や厚生労働省の考え、今後の支援の方向性が分かるので、特に学校関係者や支援をする側の人は一読してみてはいかがでしょうか。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000202961_00004.html

 

こちらにもゲーム依存について書いています。合わせてご覧ください。

www.yamakioffice.com