心理学ブログ

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ゲーム障害やネット依存などの依存を中心に、30代半ばの中堅公認心理師(臨床心理士)が心理学の知識や関連する話題などについて書いていきます

ゲームやネットなどの行動を止めさせるためにはどのように考えたら良いのか

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家族のゲーム依存やネット依存、盗撮、万引きなどのいわゆる依存や嗜癖と言われることで困っている人は、「ゲームをしなくなったらいい」、「ネットをずっと見なくさせたい」といった「~~しない」という思いでカウンセリングを申し込まれることが多いです。

依存や嗜癖は、無くしたい行動がはっきりしているので、そのような思いを持ちやすいです。

でも、言われる方からすると、自分のやっていることを「~~するな!」と言われたら、なかなか言うことを聞きにくいですよね。

それでは、家族などの周囲の人は、どのように考え、どういう言葉かけをするとより相手に伝わりやすいのか、ご紹介していきます。

相手に伝わりやすい具体的な言い方

依存の問題は、その依存行動がなくなったらいいと考えるのは当然ですね。

ゲーム依存であれば、「ゲームをしなくなったらいい」と考えます。

だから「ゲームはやめなさい」と声かけするわけです。

つまり、「ゲームをしない」ということが行動目標になります。

相手に、こうしてほしいと伝える時はわかりやすくて、具体的な方が伝わりやすいです。

では、どのような伝え方で、どのような内容を伝えることが、相手に具体的でわかりやすいのでしょうか?

「行動」の考え方

さて、ここで突然ですが、「行動」とは何でしょうか?

心理学的に言えば、先ほどの「ゲームをしない」は、行動ではありません。

「ゲームをしない」が行動ではないとはどういうことでしょうか。

死人テスト

死人にもできることは行動ではないという考え方があります。逆に言うと、死人にはできないことは行動ということです。この考え方は主に、認知行動療法の中の応用行動分析学という分野で使われることが多いです。

それでは、死人にもできることとは、一体なんでしょうか?

それは、否定受け身状態の3つが挙げられています。

否定

「~~ない」、「~~しない」という言い方

例:「走らない」、「怒らない」、「気にしない」、「ゲームしない」

受け身

「~~れる」、「~~られる」という言い方

例:「許される」、「愛される」、「話しかけられる」、「認められる」

状態

動きのない状態を表す言い方

例:「座っている」、「落ち着いている」、「穏やかでいる」

微妙で分かりにくいですが、「座っている」は状態ですが、立っている状態から「座る」は動きがあるので行動です。

行動の言い換え

否定の言い換え

否定の言い換えの場合は、「否定したい行動の代わりにどんな行動をしてほしいのか」考えるのがポイントです。

走らないでほしいのであれば、走らない代わりにどうしてほしいのか、ということです。歩いてほしいのか、立ち止まって待ってほしいのか、はたまたジャンプしてほしいのか。

1つの行動を否定する場合、それ以外の行動はしてもよいと受け止められる可能性があります。「走らない」と、学校の廊下等を走ることを否定された子がスキップして、さらに先生に怒られるなんてことも起こります。でも、「歩きましょう」と言われれば、その行動だけをしてほしい(それ以外はしない)というメッセージとなります。

・走らない   ➡ 歩きましょう

・ゲームしない ➡ 一緒にご飯を食べよう

・万引きしない ➡ お金を払って物を購入する

否定の言い換えの例外

否定の言い方をしてはいけないわけではありません。本当に危ないことや、絶対にしてほしくないことなんかの時には、否定や禁止の言い方をしてもいいと思います。その時でも、「~~はしてはいけないよ。~~しようね」と代わりにしたらよい行動も一緒に伝えられるといいと思います。

受け身の言い換え

受け身の言い換えの場合は、「~~してもらうために、自分ができそうなことは何か」を考えるのがポイントです。

例えば、相手から「褒められたい」のであれば、褒めてもらうために自分のできそうなことを考えます

・親から褒められる     ➡ お手伝いをする

・新しいゲームを買わされる ➡ 購入を断る 

状態の言い換え

状態の言い換えの場合は、どのような動作をするのかをイメージしながら考えるのがポイントです。

・夜は寝てなさい ➡ 12時までには布団に入りなさい

・静かにしなさい ➡ ゲームするならイヤホンしなさい 

言い換えるメリット

日常会話ではここまで意識して言い換えることはないかもしれませんが、普段からこのように、具体的な「行動」で伝えるようにすると、以下のようなメリットがあります。

  • 相手にしてほしい行動が伝わりやすくなる
  • 相手にしてほしい行動を考えやすくなる
  • 否定形ではない方が相手も比較的受け入れやすい
  • 目標としての行動を考えやすくなるため、その行動をするための方法や工夫等も考えやすくなる。

まとめ

今回紹介したような、具体的な行動の考え方ができるようになると、相手にも伝えやすくなり、コミュニケーションがとりやすくなります。

また、具体的な行動にしていくことで、それが出来た時に褒めやすくなりますし、褒められた方はモチベーションが上がりますね。

しかし、考え方や伝え方はクセになっていると、なかなか一人で変えることは難しいかもしれません。そのような時は、カウンセリングで一緒に「行動」の考え方や伝え方について検討することが出来ます。

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