心理学ブログ

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ゲーム障害やネット依存などの依存を中心に、30代半ばの中堅公認心理師(臨床心理士)が心理学の知識や関連する話題などについて書いていきます

これが学術集会の意味!条件反射制御法学会の学術集会に参加して

f:id:igarashi1220:20211224020245j:plainカウンセリングで実施している条件反射制御法を勉強するために条件反射制御法学会の学術集会に参加したので、その感想をまとめます。

条件反射制御法とは

条件反射制御法とは、薬物乱用や飲酒、ギャンブル、万引き、痴漢行為、盗撮、ストーカー行為、放火などの反復する行動などを抑制する技法です。

条件反射制御法学会では以下のように書かれています。

条件反射制御法はパヴロフ学説を基盤とし、やめられない行動、好ましくない感情や感覚、業務動作の不適切な発生等を制御するものとして展開してきました。

やまき心理臨床オフィスでは、盗撮、痴漢、ゲーム依存、窃盗などの行動を抑制したい相談者さんに実施することがあります。

条件反射制御法学会

条件反射制御法の勉強のために、第十回学術集会に参加しました。今回のテーマは「トラウマと逸脱行動」で、条件反射制御法を用いた報告が3例と、講演、シンポジウムがありました。

報告

それぞれの医療機関や施設等でどのように条件反射制御法を用いているのか聞けるのでためになります。条件反射制御法の歴史は他の心理療法からすると、まだできたばかりですので、まだまだ改良や変化している段階だと思います。それぞれの専門家が行っている工夫や改良を聞いて、少しでも自分の実践にも取り入れたいと思います。条件反射制御法の事例報告は、他の学会等ではほとんど聞く機会がなく、条件反射制御法学会でしか聞けないので、貴重な勉強の機会になりました。知識を聞く勉強会も大切だとは思いますが、今回は今後自分が行う条件反射制御法に直接関係する臨床の部分が聞けるので、ためになりますね。実際の手順ややり方等は、来年1月にあるオンライン研修会に参加してさらに勉強したいと思います。

講演 EMDRーその手続きと効果ー

日本EMDR学会理事長の市井先生のEMDRについてのお話でした。

EMDRとはEye Movement Desensitization and Reprocessingの略称で、日本語では眼球運動による脱感作と再処理法と言います(ただ、日本語で言うことはほとんどなくて、EMDRと言いますね)。

今回の学術集会のテーマが「トラウマと逸脱行動」なので、PTSD心的外傷後ストレス障害)に対して、エビデンスのある心理療法であるEMDRをお話できる市井先生を呼ばれたのでしょうか。

市井先生がEMDRをされる時の指の動きを見られたのはかなり嬉しかったですね。お話されていて、おもしろいなと思ったのは、EMDRの基礎的な研究の紹介でした。

内容の記憶が曖昧ですが、トラウマ反応?恐怖条件付け?の状態にしたラットにEMDRに似た眼球運動をさせるように光を提示する。そうするとトラウマ反応?恐怖条件付け?が低下していくという実験研究でした。

この実験から、”眼球運動”が効果を及ぼしていると考えられるらしいです。ラットを使った基礎的な研究がEMDRという、カウンセラーであれば誰もが名前は聞いたことがある心理療法に繋がるというのは面白かったですね。

こういう臨床的にも意味が感じやすい研究がもっと紹介されたり、大学院でも学ばれたりしたら、臨床に繋がる研究が多くなるのかもなぁ、自分ももう少し研究に興味を持ったのかもなぁ、といった感想も浮かびながら聞いていました。

シンポジウム 本当はどのような有責性があるのか

法律の話であり、その手を内容に今まで触れることが少なかったカウンセラーからすると、すべての話を理解できたわけではないですが、覚せい剤や万引き、性的逸脱行為をしている人に対して、懲役刑だけで良いのかという議論だったと理解しています。

反復する逸脱行動は再犯率が高いことが知られています。そのような人たちに対して、懲役刑だけで良いのか。そもそも懲役刑とは何のためにあるのか。そのような人たちには有責性はあるのかといったテーマで3人の法律の専門家それぞれからご意見と、その後ディスカッションがありました。

そのご意見の中には、医療観察法の話も出てきました。医療観察法とは、心身喪失の状態により重大な他害行為を行った場合、刑罰を与えるのではなく、継続的かつ適切な医療ならびにその確保のために必要な観察および指導を行うことによって、その病状の改善およびこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、社会復帰を促進することを目的とした法律です。

反復する逸脱行為も、これと全く同じというわけではないですが、似たような考え方をして、適切な治療を受けることを判決として出すのはどうなのかという意見もありました。諸外国ではそのようにしているところもあるみたいですね。

考え方は人それぞれあると思いますし、一概にどれがいいとかはわからないですが、学会としてこのようなことを議論していくんだという姿勢や熱量を感じました。こういった議論が蓄積されていって、国や関係省庁に上がっていくと、施策や法律等の形にもなっていくのでしょうか。こういった”今後の在り方”を議論していくのが学術集会の一つの醍醐味なんだろうなぁと感じましたね。

まとめ

今回は、条件反射制御法学会の学術集会に参加した感想について書きました。今回の内容をまとめると以下のようになります。

  • 医療機関や施設で行っている条件反射制御法の実際
  • EMDRに関する基礎的実験研究
  • 有責性についての議論

盗撮やゲーム依存、万引き等々、反復する行動を抑制させたいという方は、こちらもご覧ください。

www.yamakioffice.com

カウンセリングに申し込んだ方が良いタイミングなのかわからない方はこちらを参考にしてください。

 

sinri-psychology.hatenablog.com