心理学ブログ

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心理学の知識や関連する話題などについて書いていきます

#4 JR東日本が痴漢防止アプリを実証実験

 テレビやネットのニュース等ですでにご存じの方も多いと思いますが、タイトルの通り、JR東日本が痴漢防止アプリを実証実験するそうです。
 JR東日本が導入を検討しているアプリについてまとめてみたいと思います。

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JR東日本の取り組み

 JR東日本痴漢防止対策に関する実証実験の実施についてにおいて、以下のように発表しています(一部抜粋)

社会的な課題の一つである痴漢問題の解決に向けて、国立情報学研究所新井紀子教授をはじめ、有識者の方々から有益なご意見をいただきながら、お客さまが列車内で痴漢行為を受けた際に、スマートフォンの専用アプリにより車掌へ通報するシステムの検討を進めてきました。
このたび、このシステムの効果等を検証するため、列車内で実証実験を行います。

全文をご覧になりたい方は以下のPDFをご覧ください。

https://www.jreast.co.jp/press/2019/20200204_ho02.pdf

アプリの内容

  1. アプリをインストールしている人が痴漢行為を受けた時に、アプリのボタンを押すことで車掌に通報できる
  2. 車掌は、携帯するタブレット端末内の専用アプリの通告内容に基づき、注意喚起の車内放送を行う

 いくつかのネットニュースを読むと、痴漢行為を受けている位置の特定には本人がアプリに入力する、GPS機能を使うと、両方の記述が見られました。
 また、周りで同じアプリを入れたスマホを持つ人にも通報する、音を鳴らして周りに気付いてもらう、といった機能があるとの記事もありました。
 実際に導入された時にどのような機能が搭載されているのかはJR東日本からの続報を待ちたいと思います。

導入実験のプロセス

 導入実験は第1ステップと第2ステップに分けて行われる予定です。

ステップ1

期間:2月下旬~3月中旬(土休日は除く)

時間帯:7:00頃~10:00頃

場所:埼京線車内(大宮駅~新宿駅

実験概要:

・社員およびモニターが専用アプリのボタンを押す

・車掌が車内放送(試験)にて注意喚起

※車内放送は3パターン

パターン1:一般的なマナー放送 例)「痴漢を見かけた方はお知らせください」
パターン2:迷惑行為があったことを伝える放送 例)「車内のお客さまより迷惑行為の連絡がありました」
パターン3:〇号車から痴漢通報があったことを伝える放送 例)「〇号車のお客さまより、痴漢の通報がありました」

・お客様アンケートによる調査

ステップ2

期間:第1ステップの結果を踏まえて、6月以降

場所:埼京線車内

実験概要:

・モニターが専用アプリのボタンを押す

・車掌が車内放送にて注意喚起および最寄り駅の駅員と連携(警察への通報等)

※車内放送は1パターン

・モニターアンケートによる調査

まとめ

 JR東日本が実証実験を行う痴漢防止アプリの機能、実証実験の時期や内容についてまとめてみました。痴漢防止アプリは他にもいくつかあります。ダウンロードを検討する際の参考にしてもらえたらと思います。

 痴漢行為を止めたい、再犯を防止したいというご本人やご家族からのご相談はやまき心理臨床オフィスで承っております。

www.yamakioffice.com

#3 ストレスマネジメント

ストレスマネジメントとは

 ストレスマネジメントとは、ストレスの原因を知り、その原因やストレス反応に対処する方法や考え方のことです。
 自分にとってのストレスの原因を知り、自分に出ているストレス反応を少しでも早く自覚し、様々な方法で対処できるようになることを目指します。
 人が生きていく上でストレスと無縁ではいられませんが、対処方法と考え方を使ってうまくストレスと付き合えるようになりましょう。 

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ストレスとは

 ストレスは元々、「外側からかかる力による物体の歪み」といった意味で用いられていました。
 それが現在、私たちが用いている意味でストレスという言葉を最初に用いたのはオーストラリアの生理学者であるハンス・セリエ(Hans Selye)と言われています。
 一般的には、ストレスの原因も、ストレスによって引き起こされる反応も「ストレス」と言いますが、ストレスの原因のことをストレッサー、ストレスによって引き起こされた反応のことをストレス反応と分けて言います。
 ストレスはなるべく少ない方が良い物、減らした方が良い物として語られることが多いですが、適度なストレスがあった方が人はパフォーマンスを発揮しやすいと言われています。

ストレスの原因

 ストレスに対処するためには、まずストレスの原因には、どのようなものがあるのかを知ることが必要です。そして、その中で自分にとってよりストレスとなっている原因を把握することが重要です。

ストレッサーの種類

 ストレッサーにはどのような種類があるのでしょうか?様々な捉え方によってストレッサーの種類も異なります。例えば、以下のような捉え方があります。

職場のストレス要因

  1. 心理・社会的要因
    人間関係、仕事の負担、仕事の裁量度
  2. 物理的要因
    温度(高温、低温)、光、音(騒音)
  3. 化学的要因
    有害物質(排気ガス有機溶剤)、たばこ
  4. 生物学的要因
    細菌、ウィルス、花粉、寄生虫

社会的再適応評価尺度(Social Readjustment Rating Scale:SRRS)

 米国の社会学者ホームズと内科医レイによって1967年に作成された、人々のライフサイクル上に起こるイベントをストレッサーとし、そのストレス度合いをまとめたものです。配偶者の死が100、結婚が50となっています。

ストレス反応

 ストレス反応は、大きく分けて3つの側面に出ます。

  1. 心理的側面
    抑うつ、意欲の低下、興味の減退、不安、緊張、イライラ、焦燥感など
  2. 行動的側面
    能率の低下、アルコール依存、過食など
  3. 身体的側面
    頭痛、動悸、息切れ、下痢、便秘、食欲不振、不眠、腰痛、高血圧など

 人によって出やすいストレス反応の傾向があります。例えば、ストレスがかかるとまず頭痛がする人は他のストレスがかかった時にも、頭痛がまずストレス反応として出ることが多いです。
 自分の出やすいストレス反応を覚えておくと、ストレス反応を軽症のうちに早期発見しやすくなります。

コーピング

 ストレスへの対処方略のことをコーピングと言います。コーピングの種類は大きく分けると、問題焦点型コーピング情報焦点型コーピングの2つがあります。

問題焦点型コーピング

ストレッサーに対して働きかけ、それ自体を変化させて解決を図ること。

  • 家族や友人、同僚、先輩、専門家などに相談する
  • 何がストレスになっているのかを分析し、そのストレスを軽減するように働きかける
  • 人間関係や環境から遠ざかる
  • 問題解決を図る

 例えば、職場の同僚との関係がストレッサーであれば、同僚や上司に相談する、同僚との関係がうまくいっていない原因を分析し、対策を考えて実行する、異動願を出すといったことが考えられます。

情動焦点型コーピング

ストレッサーに対して働きかけるのではなく、自分自身の考え方、受け止め方を変えることでストレスを軽減すること。

  • 気晴らしに好きなことをする
  • 友人に愚痴る
  • 深呼吸する
  • 仕方がないと割り切る

コーピングリスト

 ストレス反応が出た時に、自分のコーピングは何かを考えて実行するのは大変です。そのため、自分自身がすでにしているコーピングを書き出し(またはスマホにメモして)、リストにしておくと、ストレス反応が出た時にそのリストの中から選んで実行しやすくなります。

コーピングリスト作成のコツ

  • たくさんのコーピングを書き出す
  • なるべく具体的にする
  • 時間、労力、お金があまりかからないものにする

  コーピングの候補がたくさんあった方が、このストレスにはこのコーピングを試すというふうに選びやすくなりますし、このコーピングでうまくいかなかったから、こっちのコーピングを試してみようといろいろと試しやすくなります。
 コーピングをたくさん書くためのコツは細かくすることです。例えば、以下のような感じです。

 ①ディズニーランドに行く

 ディズニーランドに行くのがストレス発散だとしても、ストレスが溜まるたびにディズニーランドに行くというのは時間的、金銭的に難しい。1デーパスポート(大人)で7500円です。【公式】東京ディズニーランド | 東京ディズニーランド

 これを細かくすると以下のようになります
 ①ディズニーランドに行く予定を立てる
 ②ディズニーランドに行く
 ③ディズニーランドに行った時に撮った写真を見返す
 ④ディズニーランドを紹介しているブログを見る
 このように細かくすると、コーピングの数が増えますし、お金や時間がそんなにかからないで行いやすいものになりました。④ディズニーランドを紹介しているブログを見る、についてはブックマークしておくとさらにやりやすくなります。ストレスで疲れている時にわざわざディズニーランドを紹介しているブログを探すのは大変ですからね。細かくして、具体的にしていくと、お金も時間も労力もそれほどかからない、やりやすいコーピングリストができると思います。

 ストレスが溜まった時にコーピングリストの中から意識的にコーピングを選ぶようにすると、ストレスAにはこのコーピングをする、ストレスBにはこのコーピングをするというふうに、傾向が出てきます。
 例えば、仕事でミスをした時にはこの音楽を聴く、家族と喧嘩をした時にはこの音楽を聴くといったようなことです。
 このように、同じ”音楽を聴く”でも、ストレスによって聴くアーティストや曲調などが異なるかもしれません。その傾向を把握するためにも、具体的に細かくして書いておいた方がいいでしょう。

まとめ

 ストレスの多い現代社会において意識的にストレスを対処することはとても重要です。対処をするためには、以下のことが重要です。

  • 自分のストレッサーを把握する
  • 自分のストレス反応の傾向を知る
  • 様々なコーピングで対処する 

#2 生物心理社会モデルを用いたアセスメントと介入

カウンセリングには様々な流派や技法、アプローチがあり、それぞれの理論に基づいたアセスメントと介入の方法が存在します。
初学者のうちは特に、どのアプローチを学んだらよいのか迷うことが多いと思います。また、他のカウンセラーや対人援助職(例えば、医療系であれば看護師、教育系であれば学校の先生等)と情報共有やケースカンファレンスをする際に、前提となるアプローチの仕方やケースの見立てが異なっていると、やり取りに苦慮することもあります。
そのような際に活用しやすい生物心理社会モデルと用いたアセスメントと介入を今回は紹介します。

 生物心理社会モデルを用いたアセスメントと介入

 生物心理社会モデルは疾患を生物学的要因、心理的要因、社会的要因の3つの要因から総合的に捉え、介入アプローチを考えます。
生物心理社会モデルの基本的な内容を知りたい方はこちらを参照してください。 

生物心理社会モデルを用いたアセスメントと介入の概要 

生物心理社会モデルに基づいて、クライアントを包括的にアセスメントし、そのアセスメントに基づいた介入方法の立案までの方法とフォーマットを、近藤直司先生が作成しています。

近藤直司 - Wikipedia

医療・保健・福祉・心理専門職のためのアセスメント技術を高めるハンドブック【第2版】――ケースレポートの方法からケース検討会議の技術まで

近藤先生は精神科医として、精神保健センターと児童相談所で勤務されている時期に、ケース検討会議や事例検討形式の研修などでケースレポートを聴く回数が多くありました。そのような経験から、ケース検討会議の効率化、事例検討形式の研修の効果を高めるため、アセスメントの力量を高めるために、ケースレポートの方法を作成しました。元々はケースレポートの作成・ケース検討会議のための方法として考えられましたが、個別のカウンセリングにも十分応用できます。
この方法は情報収集-アセスメント-支援課題-支援計画という4つの段階に分けて考えます。

生物心理社会モデルを用いたアプローチ

情報収集

情報はカウンセリング中にクライアントが話された内容だけでなく、表情や仕草といった客観的に見えるもの、客観的データなども含まれます。
例えば、不登校気味の児童とのカウンセリングであれば、以下のようになります。

  • 「A君とは仲良しだよ」と言っている。
  • 暗い表情で、小さい声でしゃべる。
  • テストの結果(算数〇点、国語△点)

この情報は次のアセスメントと明確に分けることが重要です。情報は客観的に観測が可能なものであり、アセスメントはその情報を基にした解釈や推測(主観)です。

アセスメント

アセスメントは、生物的、心理的、社会的の3つの要因に分けて考えます。アセスメントは主観的な解釈、理解、仮説のため、絶対の正解というものはありません。しかし、なるべく正確なアセスメントをするためには、情報との整合性を考えることが重要です。
今回はわかりやすく生物的、心理的、社会的要因にきっちりと分けていますが、実際の臨床でアセスメントしていくと、どの要因に分けていいのかわからない場合も出てくると思います。その場合は厳密にどちらかの要因に分ける必要はありません。生物的要因と心理的要因といった複合的要因にまたがる場合も十分に考えられます。
上記の例をアセスメントすると以下のようになります。

  • 相性の良い子とであれば、良好な対人関係を築けるのだろう(社会的)
  • 自尊心が低く、自分を表現することが苦手と思われる(心理的
  • 生得的に知的発達の遅れがあるのかもしれない(生物的)

支援課題

アセスメントに基づき、必要と思われる支援課題を考えます。抽象的な表現ではなく、実際に介入が可能な課題を立てていきます。あまりにも大きな課題だと支援計画を考えにくくなるため、これなら支援できそうと思えるくらいの課題を立てるのが重要です。
今までの例で言うと、以下のようになります。

  • 登校しやすい環境設定
  • 自分を表現する機会の確保
  • 知的能力の評価

支援計画

支援課題に対応した具体的介入プランを考えます。具体的な支援プランというのは、「誰が」「どんな方法で」「いつまでに」をはっきりさせることです。例えば以下のようになります。

  • 今度の席替えの時にA君と同じ班になるように担任が調整する。
  • 週1回、自分を表現できるようなカウンセリングをカウンセラーが行う。
  • 1か月以内に、子どものWISC受検について担任が保護者に提案する。

今回は例のため、1つの情報に対して→1つのアセスメント→1つの支援課題→1つの支援計画としましたが、実際にはいくつもの情報から1つのアセスメントをすることになります。

生物心理社会モデルを活用するメリット

カウンセラーとしてのスキルアップ

この生物心理社会モデルを意識することで、カウンセラーとして重要なスキルが上がると思われます。
情報収集-アセスメント-支援課題-支援計画という4つの段階を意識することで、どこが足りないのか、どこを改善したらいいのかが分かりやすいです。
支援課題と支援計画を立てにくい理由として、アセスメントが不足していることが分かれば、どの情報が必要なのかが分かりやすいため、必要な情報を得るための意図を持った質問をしやすくなります。また、情報収集したどの客観的情報によってどのようにアセスメントしたかが分かりやすいため、アセスメント力が身に付きやすいです。

情報共有やケースカンファレンスがしやすくなる

皆さんは誰かと情報共有する時に、もっとわかりやすく伝えられたら良かったのに、と思ったことはありませんか?ケースカンファレンスで話し合ったけど、誰が何をしたらいいのかわからないまま終わったことはありませんか?このモデルを活用すると、情報共有やケースカンファレンスがしやすくなります。
例えば、上記の例であれば「この子はテストの結果が算数〇点、国語△点でした。そのため、生得的に知的発達の遅れがあるのかもしれません。そのため、まずは知的能力の評価が必要だと考えます。知的能力の評価をするために、子どものWISC受検について担任が保護者に提案するのはいかがでしょうか?」と言うことが出来ます。これは、この情報から、このようにアセスメントしました。それに基づき、このような支援課題があり、このような介入が考えられる、という流れで話しています。

他職種連携がしやすくなる

カウンセラーは様々な領域で、様々な職種の人達と連携しながら支援することが多いですが、各専門家のスタンスや拠って立つ理論が異なるために、必ずしも連携がやりやすいとは限りません。このモデルは汎用性が高く、どの領域、どの職種の人達との連携にも活用できます。

 まとめ

今回は生物心理社会モデルと用いたアセスメントと介入を紹介しました。あまりメジャーではないかもしれませんが、非常に汎用性が高く、シンプルなモデルのため、使いやすいと思います。
また、このモデルを意識することでカウンセラーのスキルアップが期待できたり、他職種との連携やケースカンファレンスがしやすくなったりしますので、活用してみてはいかがでしょうか。

#1 生物心理社会モデル

生物心理社会モデル(bio-psycho-social model)はジョージエンゲルが1977年に提唱した、人間の疾患を包括的に理解し、アプローチするためのモデルです。

このモデルは疾患を生物的要因からだけではなく、個人の心理的要因、個人を取り巻く社会的要因の3つの要因から総合的に捉え、介入アプローチを考えます。

生物心理社会モデルの特徴は、①3つの側面から、さまざまな関連要因を包括的に扱っている点、要因どうしが複雑に相互用しあって個人に影響を及ぼしていると考える点です。

このモデルを活用することにより、個人の身体的・精神的疾患に対して多面的なアプローチが可能となり、介入や援助をさまざまなレベルで提供しやすくなります。

 

3つの要因とは以下のようになります。

●生物的要因

生得的疾患、発達特性、身体症状、生来的気質など

 

心理的要因

感情、認知、ストレス、自己効力感、対処行動、無意識など

 

●社会的要因

家族との関係、社会(学校、職場、コミュニティ)との関係、福祉、ソーシャルサポート、経済的状況、居住地や属しているコミュニティの風土や慣習など

 

カウンセラーは心理的要因を重視しやすく、生物的要因、社会的要因が抜け落ちやすいと思います。

相談者のさまざまな要因を包括的にアセスメントし、それぞれの要因へのアプローチができることが、重要です。

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