心理学ブログ

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ゲーム障害やネット依存などの依存を中心に、30代半ばの中堅公認心理師(臨床心理士)が心理学の知識や関連する話題などについて書いていきます

ゲームやネットなどの行動を止めさせるためにはどのように考えたら良いのか

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家族のゲーム依存やネット依存、盗撮、万引きなどのいわゆる依存や嗜癖と言われることで困っている人は、「ゲームをしなくなったらいい」、「ネットをずっと見なくさせたい」といった「~~しない」という思いでカウンセリングを申し込まれることが多いです。

依存や嗜癖は、無くしたい行動がはっきりしているので、そのような思いを持ちやすいです。

でも、言われる方からすると、自分のやっていることを「~~するな!」と言われたら、なかなか言うことを聞きにくいですよね。

それでは、家族などの周囲の人は、どのように考え、どういう言葉かけをするとより相手に伝わりやすいのか、ご紹介していきます。

相手に伝わりやすい具体的な言い方

依存の問題は、その依存行動がなくなったらいいと考えるのは当然ですね。

ゲーム依存であれば、「ゲームをしなくなったらいい」と考えます。

だから「ゲームはやめなさい」と声かけするわけです。

つまり、「ゲームをしない」ということが行動目標になります。

相手に、こうしてほしいと伝える時はわかりやすくて、具体的な方が伝わりやすいです。

では、どのような伝え方で、どのような内容を伝えることが、相手に具体的でわかりやすいのでしょうか?

「行動」の考え方

さて、ここで突然ですが、「行動」とは何でしょうか?

心理学的に言えば、先ほどの「ゲームをしない」は、行動ではありません。

「ゲームをしない」が行動ではないとはどういうことでしょうか。

死人テスト

死人にもできることは行動ではないという考え方があります。逆に言うと、死人にはできないことは行動ということです。この考え方は主に、認知行動療法の中の応用行動分析学という分野で使われることが多いです。

それでは、死人にもできることとは、一体なんでしょうか?

それは、否定受け身状態の3つが挙げられています。

否定

「~~ない」、「~~しない」という言い方

例:「走らない」、「怒らない」、「気にしない」、「ゲームしない」

受け身

「~~れる」、「~~られる」という言い方

例:「許される」、「愛される」、「話しかけられる」、「認められる」

状態

動きのない状態を表す言い方

例:「座っている」、「落ち着いている」、「穏やかでいる」

微妙で分かりにくいですが、「座っている」は状態ですが、立っている状態から「座る」は動きがあるので行動です。

行動の言い換え

否定の言い換え

否定の言い換えの場合は、「否定したい行動の代わりにどんな行動をしてほしいのか」考えるのがポイントです。

走らないでほしいのであれば、走らない代わりにどうしてほしいのか、ということです。歩いてほしいのか、立ち止まって待ってほしいのか、はたまたジャンプしてほしいのか。

1つの行動を否定する場合、それ以外の行動はしてもよいと受け止められる可能性があります。「走らない」と、学校の廊下等を走ることを否定された子がスキップして、さらに先生に怒られるなんてことも起こります。でも、「歩きましょう」と言われれば、その行動だけをしてほしい(それ以外はしない)というメッセージとなります。

・走らない   ➡ 歩きましょう

・ゲームしない ➡ 一緒にご飯を食べよう

・万引きしない ➡ お金を払って物を購入する

否定の言い換えの例外

否定の言い方をしてはいけないわけではありません。本当に危ないことや、絶対にしてほしくないことなんかの時には、否定や禁止の言い方をしてもいいと思います。その時でも、「~~はしてはいけないよ。~~しようね」と代わりにしたらよい行動も一緒に伝えられるといいと思います。

受け身の言い換え

受け身の言い換えの場合は、「~~してもらうために、自分ができそうなことは何か」を考えるのがポイントです。

例えば、相手から「褒められたい」のであれば、褒めてもらうために自分のできそうなことを考えます

・親から褒められる     ➡ お手伝いをする

・新しいゲームを買わされる ➡ 購入を断る 

状態の言い換え

状態の言い換えの場合は、どのような動作をするのかをイメージしながら考えるのがポイントです。

・夜は寝てなさい ➡ 12時までには布団に入りなさい

・静かにしなさい ➡ ゲームするならイヤホンしなさい 

言い換えるメリット

日常会話ではここまで意識して言い換えることはないかもしれませんが、普段からこのように、具体的な「行動」で伝えるようにすると、以下のようなメリットがあります。

  • 相手にしてほしい行動が伝わりやすくなる
  • 相手にしてほしい行動を考えやすくなる
  • 否定形ではない方が相手も比較的受け入れやすい
  • 目標としての行動を考えやすくなるため、その行動をするための方法や工夫等も考えやすくなる。

まとめ

今回紹介したような、具体的な行動の考え方ができるようになると、相手にも伝えやすくなり、コミュニケーションがとりやすくなります。

また、具体的な行動にしていくことで、それが出来た時に褒めやすくなりますし、褒められた方はモチベーションが上がりますね。

しかし、考え方や伝え方はクセになっていると、なかなか一人で変えることは難しいかもしれません。そのような時は、カウンセリングで一緒に「行動」の考え方や伝え方について検討することが出来ます。

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カウンセリングで認知の歪みを治す方法を教わってきて

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カウンセリングでは、たまに相談者の方が主治医や家族、会社の人などから勧められたから来所することがあります。

その時の勧められ方として、タイトルにあるように「カウンセリングで認知の歪みを治す方法を教わってきて」と言われることがあるようです。

今回はこの「認知の歪み」について書いていきます。

認知の歪みとは

認知の歪みという言葉は、認知療法創始者であるアーロン・ベック(Aaron Temkin Beck)が抑うつの発現と維持を説明するモデルの中で言い始めたようです。

認知とは、物事の受け止め方や思考のことで、これが現実と比べて著しくずれている場合を「認知の歪み」と言ったようです。

認知行動療法

上で書いている認知療法と、それよりも前からある行動療法を合わせたものを認知行動療法を言います。

認知行動療法についてざっくりと説明すると、ある問題や悩み、困っていることを、客観的出来事と、その個人の内面(認知・行動・感情・身体反応)に分けて捉え、認知又は行動を変容させて、その問題を解決させる様々な方法の総称の事です。

認知の歪みの修正(矯正)のためのカウンセリングを勧められる

周囲の人から見ると、その人の認知(物事の受け止め方、考え方)がおかしいから問題が生じている。だから、その認知を修正してもらうためにカウンセリングを受けてきたら?と言うのでしょう。

ネットで調べると、認知の歪みを修正するための方法が認知行動療法を書かれていることが多いので、そのように思ってしまうのも無理はないと思います。

カウンセリングを勧められた人は、自分が普通の人とは異なる、歪んだ認知を持っているからカウンセリングを受けないといけないんだと気持ちが落ち込んでしまうかもしれません。

でも、認知が歪んでいるって、どういうことなんでしょうか?

非機能的認知

以前、認知行動療法の研修で、ある先生がこんなことを言っていました。

「認知の歪み」という言い方をする時、それは正しい認知と正しくない認知があるという前提になっている。でも、今あなたがしている認知が正しいとは証明はできない。なので、歪んだ認知というものはない。

ただ、この状況でそのような認知をすると問題(気分の落ち込み、対人関係上の問題など)が生じることはある。その状況においては、そのような認知をしてもうまく機能しないということはある。だから、「非機能的認知」と言う。

つまり、その人の認知が正しいか間違っているのかを判断するのではなく、ある状況下では機能しない(もしかしたら別の状況下では機能するかもしれない)認知があるだけなんだろうと思います。

そして、非機能的認知をポジティブで前向きな認知に修正するというよりも、他の視点の認知もできるよう付け加えたり、自分の中にすでにある適応的な認知があることを自覚できたりするようにアプローチしていきます。認知の修正というより認知を柔軟にするという言い方をする先生もいます。

日本認知療法認知行動療法のホームページでも以下のように書かれています。

3)認知療法では,認知のパターンを修正することにより,治療効果を得ようとする.

認知モデルは感情障害における認知の重要性を指摘していますが,認知療法の治療目標は認知の障害そのものを修正することではありません.抑うつや不安などの精神的な症状を改善するために,認知という側面からアプローチするのです.認知のパターンを修正することを通して,不快な感情の改善を図り,問題解決へとつなげていくこと,それが認知療法の目標なのです.

ここで注意すべきことは,患者の否定的思考(negative thinking)を肯定的・積極的思考(positive thinking)に転換することが重要ではない点です.認知療法は,ある状況をみる視点はいくつも存在すること,その中には患者の否定的思考よりも適応的(adaptive)・現実的(realistic)な視点が存在しうることを,患者が自覚できるように援助します.(以下略)

日本認知療法認知行動療法ホームページより引用

認知の歪みの一覧

いわゆる「認知の歪み」と言われているものを紹介します。上記で書いたように、一概に悪いものではなく、使いようによっては良い面もあります。良い面として使うためには自分の「認知のクセ」を知っていることが必要です。

白黒思考(全か無か思考、スプリッティング)

曖昧さを受容せずに完璧でないと受け入れられない、物事を「白か黒か」「0か100か」と極端に考えること。

例えば・・・

「完璧にできなければ、失敗と同じだ」考え、長時間残業しても仕事をしてしまう。

長所は・・・

物事の判断基準がはっきりしているため、スピーディに物事を進めやすい傾向にある。

べき思考

自分や他者に対して「~すべき」「~でなければならない」と考えること。ルールに縛られて苦しくなり、自分や他者の失敗を許せず怒りや緊張を感じやすい。

例えば・・・

「仕事の資料はすべての情報を調べて完璧な状態で提出しなければならない」と考え、休日も資料作成を行う。完璧に行えないと、自分を責めやすい。

長所は・・・

決めたらやり通す意志が強いタイプとも言える。評価される結果を出しやすく、周囲から頼りにされやすい。

心のフィルター(フィルタリング)

物事全体のうち、悪い部分の方を認知しやすく、良い部分が認知されにくい。

例えば・・・

テストで98点だったが、「どうしてあの問題をミスしてしまったんだろう」と考える。

長所は・・・

より良くしようとする向上心に繋がりやすい。

過度な一般化

たった1~2回起こったことや根拠が不十分なことでも、それがいつも生じると考えること。「いつも」「絶対」「必ず」「すべて」「間違いなく」などと考えやすい。

例えば・・・

一度のミスを「私はいつも同じ間違いをする」と考える。

1回忘れ物をしただけで「なんて自分は物忘れが激しいんだろう」と否定的に考えやすい

長所は・・・

同じ失敗をしないように対策を立てやすくなる。

マイナス化思考

すべて悪い方向に考える傾向。良いことがあっても無視するか、悪い方にすり替えてしまう。うまくいったことは「たまたま」「運が良かっただけ」「相手の調子が良かったから」と自分以外に原因を帰属しやすい。

例えば・・・

「今日怒られなかったのは相手の気分が良かっただけ」と考える。

仕事に対して「こんなことは誰にだってできる。どうして自分はできないんだろう」と考えやすい。

長所は・・・

自分の中でできていないところを見つけようとするので観察力が付く。

結論への飛躍

心の読みすぎと先読みの誤りの2種類がある。

心の読みすぎは、他の可能性を考慮せず、他者の考えや気持ちを、一方的に推測し、そうに違いないと決めつけること。

例えば・・・

会話中に相手が時計を見たら、「私とは話したくないと思っているのだろう」と考える。

長所は・・・

相手の表情を読み取ることが得意な、気配りのできる優しいタイプとも言える。

先読みの誤りは、確かな理由がないにも関わらず、他の可能性を考慮せず、未来を否定的に予想すること。

例えば・・・

「初めてやる仕事だから、きっと失敗するだろう。」と先読みし、気分が落ち込み、それにより実際に仕事で失敗する。

長所は・・・

「初めてやる仕事だから、きっと失敗するだろう。」と考え、失敗しないように準備する慎重なタイプとも言える。

拡大解釈、過小解釈

例えば・・・

良くないこと(失敗、弱み、脅威)は最悪のことまで連想したり、大げさに捉えたりすること。必要以上に心配や不安が大きくなりやすい。良いこと(成功、強み、チャンス)は実際よりも大したことがないと捉えやすい。

長所は・・・

良くないことに対しては、考えられる最大限の対応をしやすい。成功や何らかの達成には必要以上に浮かれることがなく、謙虚な姿勢でいられる。

感情の理由付け

自分の感情を根拠に物事を判断すること。

例えば・・・

「上司と話していると気持ちがざわざわするから、きっと上司は私のことが嫌いに違いない」

長所は・・・

自分の感情をモニタリングしやすい。

レッテル貼り

合理的な根拠を考慮せず、自分や他者に対して固定化した否定的な決めつけをすること。まるで事実であるかのように思い込むこと。

例えば・・・

「私はできないことばかりで無能だ」と自分にレッテルを貼り、自分の良い所が目に入らなくなり、自分が嫌になる。

長所は・・・

思い悩むことなく結論を出しやすく、割り切りがよく、躊躇せずに決断する傾向にある。

誤った自己責任化(個人化)

自分がコントロールできないような出来事に関して、自分に責任があると考えやすい。

例えば・・・

電車が遅延して客先に遅れてしまった場合でも、「自分が悪いんだ」と考える

長所は・・・

自分事として考えられ、責任感が強い。

まとめ

今回は認知の歪みについて書きました。

  • 認知に正しい、間違っているはない
  • 認知の歪みの修正というよりは、認知を柔軟にする
  • 認知のクセは誰にでもある。自分の認知のクセを理解して、うまく使いましょう

認知行動療法の他の内容も知りたい方は、こちらもご覧ください。

 

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「孤独のグルメ」のカウンセラー的感想

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孤独のグルメ Season9 第4話のワンシーン(C)東京テレビ

孤独のグルメとは

孤独のグルメ」とは、原作・久住昌之、作画・谷口ゴローによる漫画で、2012年から1月期からテレビ東京系でテレビドラマ化もされています。

テレビドラマはseason9まで放送されていて、スペシャルや映画化もされている人気作品です。

ストーリーとしては、個人で輸入雑貨商を営んでいる井之頭五郎松重豊さんが演じています)がお客さんのところに行った、帰りに空腹になり、飲食店に入って空腹を満たすというお決まりのパターンです。

基本的にはこのパターンで、とにかくご飯を食べるシーンがメインのドラマです。

好きでよく見るのですが、年末に一気見再放送をしていました。

今までは単においしそうに食べているのが好きで見ていたのですが、よくよく考えると五郎さんのすごさを感じました。

ストレスコーピングで見る五郎さんのすごさ!

切り替えの速さ

Season9第4話では、書斎の机を欲しいという要望のお客さんがいて、いくつか提案したんですけど、違うテイストの物も見てみたいと言われ、新たに別にテイストの机のカタログを持って行ったことがありました。一度はすぐに決まりそうだったんですけど、お客さんの気が変わり、結局コーヒー3杯飲んでも決まらないという何とも残念な結果に・・・。

お客さんのところからの帰り道で、この時の五郎さんは珍しく怒っていましたね。そこで「腹が減った」と、飲食店を探すことに。お腹がすごく減っていたことと、場所が住宅街であまり飲食店がないことから、最初に見つけたお店に入ることを即決!この時にはすでに、さっきのお客さんへの怒りは忘れていて、とにかく食べることに集中していましたね。そして、最初に見つけた町中華屋に入ることを即決!さっきの怒りはもう全くなく、中華で何を食べるのかをすぐに考え始めていました。

すごい切り替えの速さですね。アンガーマネジメントで、怒りのピークは6秒と言われます。これは、怒りのピークは6秒で達し、その後は徐々に落ち着いていくといった話なのですが、実際にはくり返し思い出してずっと怒ることもありますよね。たぶん思い出したりとかしなければ、6秒以降は落ち着いていくということなんだろうと思うんですけど、でも、思い出しちゃいますよね。

でも、五郎さんは飲食店を探し始めてから、一切さっきのお客さんの事を思い出さないんです。それがすごいですね。

こんな超効果的なストレスコーピングがあるといいですね。コーピングとは対処行動の事です。

コーピングについて、詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

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自分との対話

注文時を除けば、食事中は基本的に五郎さんの独白シーンが続きます。

何を注文するか考えている時から自分との対話が始まります。

「俺の腹は何を欲しているのか」と、自分のお腹に聞きます。自分との対話に集中しているんですね。そして、食べ始めると食事との対話が始まります。この会話に集中しているんですから、お客さんへの怒りなんて思い返す隙間なんてあるはずもありません。

この時、五郎さんは孤独な状態になっているのです。

孤独力

皆さんは「孤独」という言葉に対して、どのようなイメージを持っていますか?

goo辞書で調べると、以下のような意味のようです。

 仲間や身寄りがなく、ひとりぼっちであること。思うことを語ったり、心を通い合わせたりする人が一人もなく寂しいこと。また、そのさま。「―な生活」「天涯―」

 みなしごと、年老いて子のない独り者。

確かに、一般的には寂しいとか独りぼっちというイメージがありますね。

しかし、哲学者のハンナ・アレント(Hannah Arendt)は、孤独、孤立、孤絶という3つの言葉の意味を以下のように言っています。

孤独(solitude)

自分自身と話す、1人になって対話していること。

私がみずからとともにあり、自己によって判断することは、思考のプロセスにおいて了解され、実現されるものです。そしてすべての思考プロセスは、私が自分に起こすすべてのことについて、みずからとともに対話する営みなのです。この沈黙のうちでみずからとともにあるという存在のありかたを私は孤独と呼びたいと思います。

責任と判断(ハンナ・アレント)より引用

孤立(isolation)

人と人とのあいだの政治的接触が断ち切られた状態のこと。政治的接触とは、人々が共同し、活動する関係や機会のこと。

人々が共同の利益を追って相共に行動する彼らの生活の政治的領域が破壊された時にこの人々が追い込まれるあの袋小路の事である。

全体主義の起源(ハンナ・アレント)より引用

孤絶(loneliness)

すべての物、すべての人からも見捨てられている状態のこと。

「孤独」は「一者のうちにある二者」であり、自己の中で自分自身との対話ができる状態ですが、孤絶は自分自身との対話もできない状態。

見捨てられている状態においては、人間は自分の思考の相手である自分自身への信頼と、世界へのあの根本的な信頼というものを失う。人間が経験するために必要なのはこの信頼なのだ。自己と世界が、経験をおこなう能力が、ここでは一挙に失われてしまうのである。

全体主義の起源(ハンナ・アレント)より引用

このハンナ・アレントの言葉を借りれば、五郎さんは食事をしている時、自分自身と対話しており、食事という他者との接触も持っているわけです。そういう意味での、孤独に食べているとも考えられます。

こういう「孤独力」も時には必要かもしれませんね。

実は深いドラマなのかも

こんなふうに考えていくと、実は深いドラマなのかもしれませんが、こんなことを考えずに、単純に「おいしそうだなぁ」と思いながら見ても面白いですよ。

もしよかったら皆さんも「孤独のグルメ」と見て、自分との対話をしてみてはいかがでしょうか?

 

ちなみに、五郎さんは、「これを一人で食べるの!?」というくらい食べます。たまに、注文の時に店員さんから「たくさん食べますね」と言われることがあります。

でも、五郎さん役の松重豊さんはそれほどたくさん食べられるわけではないので、収録の前には何も食べないでお腹を空かせてから撮影に臨むらしいです。その日初めての食事にすることで美味しい表情をするためという意味もあるらしいですが。

生物心理社会モデルでゲーム依存を理解する

f:id:igarashi1220:20211231103745p:plain先日、カウンセリングスペースやどりぎのオンライン研修「ゲーム障害の支援・三者三様の視点から」を、オンデマンド配信の最終日に見ました。

この研修は、依存症の治療で有名な久里浜医療センターの樋口院長と臨床心理士精神保健福祉士の3人がそれぞれの視点からゲーム依存、ネット依存についてお話していました。

この研修自体が、医師、臨床心理士精神保健福祉士というそれぞれの視点からゲーム依存を話す研修であるため、その構成自体が生物心理社会モデルとなっていました。

これを読んだ方が、少しでも生物心理社会モデルやゲーム依存についての理解が深まったらいいなと思いつつ、自分の理解も含めて、研修の感想を書いていこうと思います。

生物心理社会モデルとは

生物心理社会モデル(bio-psycho-social model)はジョージエンゲルが1977年に提唱した、人間の疾患を包括的に理解し、アプローチするためのモデルです。

カウンセラーだけでなく、医師、看護師、保健師、保育士、ソーシャルワーカー作業療法士、教師等々、様々な対人援助職が使える汎用性の高いモデルです。

生物心理社会モデルの詳しい内容は過去の記事をご覧ください。

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生物心理社会モデルで理解するゲーム依存

ゲーム依存の子どもを支援する際には、その子個人の事だけでなく、その子が置かれている状況や周囲の人達との関係性等も含めてアセスメントして理解した上で関わることが重要です。

その時に、生物心理社会モデルの枠組みで話を聞いていくと、カウンセラーは理解しやすくなりますし、理解しやすくなれば親御さんや本人とも共有しやすくなると思います。

生物学的要素

この要素のアセスメントは、カウンセラーはついついおろそかにしがちなところかもしれません。ゲーム依存で特に重要となる生物学的要素は、例えば以下のようなものがあります。

ASD自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)などのいわゆる、発達障碍傾向、知能(IQ)の偏り

この分野のアセスメントはカウンセラーが普段からしているところですね。本人からの聴取や行動観察、親御さんからの成育歴の情報収集等でもできますが、より詳細に行う場合は、医療機関心理検査のできる機関へリファーする場合もあります。

身体的発育状態、栄養状態

ゲームを長時間行うことで、運動や食事をしなくなり、栄養状態が悪くなったり、骨密度が低くなったりするそうです。それにより朝起きられなくなったり、気分が不安定になったりしやすくなります。生物学的要因により生じている状態や症状をカウンセラーは、その子の内面としての感情や認知から生じていると考えがちです。

カウンセラーは心理面から支援する職種なのでそのように考えやすいのは仕方ないですが、生物学的要因をおろそかにしがちという自覚をもってアセスメントしていく必要がありますね。

心理学的要因

心理学的要因には様々なものがありますし、それぞれが独立しているわけではなく相互に関係しています。

感情

抑うつ症状がみられることもあります。しかしこれは、元々抑うつ症状があったことでゲームという行動に逃避行動をしているのか、ゲームを行うことで親から叱られ、抑うつ症状が出現したのかには注意が必要です。

自尊感情の低さも指摘されています。これも抑うつ症状と同じように、自尊感情の低さが先か、ゲーム依存が先かはわかりません。

好み

好みとは、ゲームを含めてその子が好きな事です。子どもは基本的には親に連れられてくることが多いと思います。その時にいきなりゲームをどうやったら辞められるかの話をされたら、次からは来たくなくなるでしょう。

そのため、ゲームを含めた好みや好きなことを聞くことで、無理やりゲームを辞めさせようとしているわけではないことを知ってもらうことが重要と思います。また、ゲーム以外で好きなことを聞くことで、のちのちゲーム以外の活動性を上げるための情報にもなります。

社会的要素

社会的要素は幅の広い要素かなと思います。その子が置かれている状況などによっては、さらに様々な社会的要素があるでしょう(例えば、医療機関に受診していれば主治医、教育相談所に行っていれば、そこに相談員など)。

家族(親、きょうだい、祖父母など)

ゲーム依存は親との関係悪化(特に父親)が指摘されています。本人-母親、本人-父親だけでなく、母親-父親の関係性も必要によってはアセスメントすることになるでしょう。また、きょうだいや祖父母がいれば、それらの人達との関係性もアセスメントが必要です。

学校(担任、スクールカウンセラーなど)

ゲーム依存から学力低下不登校になることも多く、その場合、親(特に母親)が学校やスクールカウンセラーと相談していることが多いと思います。特に、最初に相談するのが開業カウンセリングオフィスということは少なく、どこかですでに相談していて紹介で来られたり、その相談先の助言を聞いてもうまくいかなかったためにご両親がネットで調べて来られたりすることが多いです。

友人(リアル、オンライン)

ゲーム依存から不登校になった子どもでもリアルの友人(クラスメイトなど)とオンラインゲーム上で交流があるということも珍しくないようです。

また、オンラインでの関係性も、その子を理解する上で重要な情報となります。対人関係上の苦手さを持っている子もいると思いますが、オンラインゲーム上では、ゲームに関するやり取りが主なので、現実世界でのコミュニケーションのような曖昧さがなく、コミュニケーションしやすいのかもしれません。

また、ゲームがうまければ褒めてもらえるので、自尊感情が上がり、褒めてもらうためにはさらにゲームを長時間プレイして上手くなる必要がある。それで強くなればさらに褒められるという循環が生まれます。

これらの傾向は実態調査の結果からも指摘されています。詳しい内容は過去の記事をご覧ください。

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ゲーム

ゲームの種類は様々あり、どのゲームをしているのかは、その子の好みが見られると思います。そのため、どのようなゲームをやっているのかも、その子のアセスメントに役立つと思われます。

FPS、TPS

FPSファーストパーソン・シューティングゲームの略で、操作するキャラクター本人の視点で戦うシューティングゲームです。

TPSはサードパーソン・シューティングゲームの略で、操作するキャラクターを追う第三者視点で戦くシューティングゲームです。

MORPG(Multiplayer Online Role-Playing Game)

「複数プレイヤー参加型オンラインRPG」などと訳され、オンラインゲームの一種でコンピューターRPGをベースとしたものを指す英語。複数のプレイヤーがネットワーク(インターネット)を用いて一つの世界で同時にRPGをプレイする。(Wikipediaより)

MMORPG(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)

「大規模多人数同時参加型オンラインRPG」のことである。オンラインゲームの一種でコンピューターRPGをモチーフとしたものを指す。(Wikipediaより)

個人的にはネットゲームといえばMMORPGのイメージがあります。

これら以外にもスマホゲームや据え置き型のゲーム(PS5など)もありますね。ゲームの種類で分けると、バトルロイヤル、パズル系、シューティング、格闘、RPG

大きく分けると複数人でチームを組んでプレイするか、1人でプレイするかでしょうか。

まとめ

ゲーム依存は本人の心理的な面だけでなく生物学的な面、社会的面である様々な対人関係が複雑に絡んでいます。それを1つずつ理解していくための方法として生物心理社会モデルについてまとめてみました。

ゲーム依存については他の記事にも書いていますので、興味を持った方はこちらもご覧ください。

 

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これが学術集会の意味!条件反射制御法学会の学術集会に参加して

f:id:igarashi1220:20211224020245j:plainカウンセリングで実施している条件反射制御法を勉強するために条件反射制御法学会の学術集会に参加したので、その感想をまとめます。

条件反射制御法とは

条件反射制御法とは、薬物乱用や飲酒、ギャンブル、万引き、痴漢行為、盗撮、ストーカー行為、放火などの反復する行動などを抑制する技法です。

条件反射制御法学会では以下のように書かれています。

条件反射制御法はパヴロフ学説を基盤とし、やめられない行動、好ましくない感情や感覚、業務動作の不適切な発生等を制御するものとして展開してきました。

やまき心理臨床オフィスでは、盗撮、痴漢、ゲーム依存、窃盗などの行動を抑制したい相談者さんに実施することがあります。

条件反射制御法学会

条件反射制御法の勉強のために、第十回学術集会に参加しました。今回のテーマは「トラウマと逸脱行動」で、条件反射制御法を用いた報告が3例と、講演、シンポジウムがありました。

報告

それぞれの医療機関や施設等でどのように条件反射制御法を用いているのか聞けるのでためになります。条件反射制御法の歴史は他の心理療法からすると、まだできたばかりですので、まだまだ改良や変化している段階だと思います。それぞれの専門家が行っている工夫や改良を聞いて、少しでも自分の実践にも取り入れたいと思います。条件反射制御法の事例報告は、他の学会等ではほとんど聞く機会がなく、条件反射制御法学会でしか聞けないので、貴重な勉強の機会になりました。知識を聞く勉強会も大切だとは思いますが、今回は今後自分が行う条件反射制御法に直接関係する臨床の部分が聞けるので、ためになりますね。実際の手順ややり方等は、来年1月にあるオンライン研修会に参加してさらに勉強したいと思います。

講演 EMDRーその手続きと効果ー

日本EMDR学会理事長の市井先生のEMDRについてのお話でした。

EMDRとはEye Movement Desensitization and Reprocessingの略称で、日本語では眼球運動による脱感作と再処理法と言います(ただ、日本語で言うことはほとんどなくて、EMDRと言いますね)。

今回の学術集会のテーマが「トラウマと逸脱行動」なので、PTSD心的外傷後ストレス障害)に対して、エビデンスのある心理療法であるEMDRをお話できる市井先生を呼ばれたのでしょうか。

市井先生がEMDRをされる時の指の動きを見られたのはかなり嬉しかったですね。お話されていて、おもしろいなと思ったのは、EMDRの基礎的な研究の紹介でした。

内容の記憶が曖昧ですが、トラウマ反応?恐怖条件付け?の状態にしたラットにEMDRに似た眼球運動をさせるように光を提示する。そうするとトラウマ反応?恐怖条件付け?が低下していくという実験研究でした。

この実験から、”眼球運動”が効果を及ぼしていると考えられるらしいです。ラットを使った基礎的な研究がEMDRという、カウンセラーであれば誰もが名前は聞いたことがある心理療法に繋がるというのは面白かったですね。

こういう臨床的にも意味が感じやすい研究がもっと紹介されたり、大学院でも学ばれたりしたら、臨床に繋がる研究が多くなるのかもなぁ、自分ももう少し研究に興味を持ったのかもなぁ、といった感想も浮かびながら聞いていました。

シンポジウム 本当はどのような有責性があるのか

法律の話であり、その手を内容に今まで触れることが少なかったカウンセラーからすると、すべての話を理解できたわけではないですが、覚せい剤や万引き、性的逸脱行為をしている人に対して、懲役刑だけで良いのかという議論だったと理解しています。

反復する逸脱行動は再犯率が高いことが知られています。そのような人たちに対して、懲役刑だけで良いのか。そもそも懲役刑とは何のためにあるのか。そのような人たちには有責性はあるのかといったテーマで3人の法律の専門家それぞれからご意見と、その後ディスカッションがありました。

そのご意見の中には、医療観察法の話も出てきました。医療観察法とは、心身喪失の状態により重大な他害行為を行った場合、刑罰を与えるのではなく、継続的かつ適切な医療ならびにその確保のために必要な観察および指導を行うことによって、その病状の改善およびこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、社会復帰を促進することを目的とした法律です。

反復する逸脱行為も、これと全く同じというわけではないですが、似たような考え方をして、適切な治療を受けることを判決として出すのはどうなのかという意見もありました。諸外国ではそのようにしているところもあるみたいですね。

考え方は人それぞれあると思いますし、一概にどれがいいとかはわからないですが、学会としてこのようなことを議論していくんだという姿勢や熱量を感じました。こういった議論が蓄積されていって、国や関係省庁に上がっていくと、施策や法律等の形にもなっていくのでしょうか。こういった”今後の在り方”を議論していくのが学術集会の一つの醍醐味なんだろうなぁと感じましたね。

まとめ

今回は、条件反射制御法学会の学術集会に参加した感想について書きました。今回の内容をまとめると以下のようになります。

  • 医療機関や施設で行っている条件反射制御法の実際
  • EMDRに関する基礎的実験研究
  • 有責性についての議論

盗撮やゲーム依存、万引き等々、反復する行動を抑制させたいという方は、こちらもご覧ください。

www.yamakioffice.com

カウンセリングに申し込んだ方が良いタイミングなのかわからない方はこちらを参考にしてください。

 

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人の感情を定義するのは難しい!恐怖と不安の心理学的違い

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この間、お仕事のとある事情で「不安」と「恐怖」という感情について調べる機会がありました。感情の概念や定義を調べるというのは大学院受験や臨床心理士公認心理師試験の時以来で、普段はしないことですが、非常に良い経験だったと思うので、自分のためにも整理してまとめてみました。

不安と恐怖の違い

辞書的意味の違い

まずはそもそもの言葉としての意味の違いを知るために、goo辞書で調べてみました

  • 不安の辞書的意味

気がかりで落ち着かないこと。心配なこと。また、そのさま。

  • 恐怖の辞書的意味

おそれること。こわいと思うこと。また、その気持ち。

「恐怖」の説明で、「恐れる」「怖い」と「恐怖」という漢字を使って説明されてもよく分からないですね。

そこで、さらに「怖い」をgoo辞書で調べてみました。

1 それに近づくと危害を加えられそうで不安である。自分にとってよくないことが起こりそうで、近づきたくない。

2 悪い結果がでるのではないかと不安で避けたい気持ちである。

3 不思議な能力がありそうで、不気味である。

不安と恐怖の違いは分かりましたか?

不安と恐怖の心理学的違い

それでは、心理学的には不安と恐怖という感情にはどのような違いがあるのでしょうか?

ぱっと浮かぶのは、不安は対象物が不明確で、恐怖は対象物が明確である感情ということです。つまり、不安は、何に対して不安を感じているのかはっきりとは説明しづらく、恐怖は、〇〇が怖い(例えば、暗いのが怖い、大きな犬が怖いなど)と説明できるという違い。大学の授業のテストでは、たぶんこれくらいの説明でも十分だと思います。でも、今回はもう少し概念などまで調べる必要があるので、調べてみました。

  • 不安の心理学的意味

心理臨床大時点で調べても、不安の明確な定義は書かれていません。大まかには、恐怖と対照させた上記と同様の記述がありました。それ以外には、実存主義哲学者のキルケゴール(Kierkegaard,S)やハイデガー(Heidegger,M)、フロイトFreud,S)の精神分析的研究、日本では笠原嘉の研究などを挙げている。そういった中で、スピルバーガー(Spielberger,C.D)の定義が載っていた。

恐ろしいという判断を基礎とした、恐怖の予期などの不確かな心理的要因が伴う情緒であり、日常的に用いられる不安は多くの場合、複雑な反射や反応を含んでおり、生活体の不安や緊張状態はその時々に応じて変化するが、人格特性として用いられる不安は不安状態に対する永続的な防衛によって特徴づけられるものであり、個人によってその広がりは異なってくる。

これを読んでもいまいちわからないですが、下線を引いた箇所だけを読むと、不安は恐怖に近いけど、不確かな情緒というふうにも理解できる。やはり対象が明確な不明確かという点が不安と恐怖の違いのようです。

  • 恐怖の心理学的意味

同じく心理臨床大事典で調べてみると、こちらは恐怖という項目立てがそもそもなく、「恐怖症」という項目の中に、恐怖についての説明があり、フロイトFreud,S)の精神分析的考え等が載っていますが、恐怖そのものの定義は書いてありませんでした。

さらに恐怖について調べていくと、「アルバート坊やの実験」で有名な恐怖条件づけや、各種の恐怖症状について書かれています。ここら辺の内容であれば、大学院受験や臨床心理士試験の時に学んだ内容なので、非常にわかりやすいですね。

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不安と恐怖の症状としての違い

心理学的意味の違いの次は、精神医学的違いを調べてみることにしました。そのために、DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアルを見てみることにしました。

DSM-5には、「不安症群/不安障害群」というのがあります。その最初に以下のような説明があります。

不安症群は、共通して、過剰な恐怖および不安と、関連する行動の障害特徴をもつ障害を含んでいる。恐怖は、現実の、または切迫していると感じる脅威に対する情動反応であり、一方、不安は、将来の脅威に対する予期である。これらの2つの状態は明らかに重複しているが、以下の点で異なっている。恐怖は闘争または逃避のために必要な自律神経系の興奮の高まり、危険が差し迫っているという思考、および逃避行動とより多く関連しており、不安は、将来の危険に対処するための筋緊張および覚性状態および警戒行動または回避行動とより多く関連している。

これを読んでやっと少しずつ理解できたような気がしてきました。

もう少し精神医学的違いを理解するために、「不安症群/不安障害群」の中で、「不安」、「恐怖」が入っている疾患名を分けていきたいと思います。

不安:分離不安症、社会不安症/社交不安障害(社交恐怖)、全般不安症

恐怖:限局性恐怖症、社会不安症/社交不安障害(社交恐怖)、広場恐怖症

不安の方は、対象が不明確で、恐怖の方は対象が明確であることがわかります。しかし、社会不安症/社交不安障害(社交恐怖)は、1つの疾患名に不安も恐怖も入っています。診断的特徴のところにも、本質的特徴は、社交状況に関する著明または強烈な恐怖または不安と書かれています。恐怖と不安は明確に分けられないところもある、概念であり、感情のようです。

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感情の概念を学ぶ意味

カウンセラーとしての普段の仕事をする時には、不安と恐怖という2つの感情の違いをここまで厳密に分けて考えることは少ないかもしれません。

でも、今回機会があって調べてみたことで、心理学や精神医学上での不安と恐怖の違いが今までよりも理解できた気がします。

定義を提唱する人によって定義の内容が異なり、統一見解がされていないために、明確な定義は難しいのだろうと思います。そもそもの概念を定義するのは難しいですよね。でも、そのそもそもの概念を知ることで、そこから作られた疾病分類や心理検査心理療法などがより理解できたり、カウンセリングでの不安や恐怖の語りへの理解に繋がったりするのではないかと思います。

機会がなければ、臨床に出てから不安と恐怖の概念の違いを調べるために、論文や本を読むことは、あまりないと思いますが、今回は機会があって不安と恐怖の概念的違いを調べてみました。

まとめ

  • 不安が対象が不明確、恐怖や対象が明確な情動
  • 定義することは難しく、明確に分けられない部分もある
  • 感情の概念を理解することが役に立つ

第1回日本公認心理師学会学術集会へ参加してきました

2021年12月12日に第1回日本公認心理師学会学術集会が行われました。残念ながらリアルではなくオンラインでの開催になってしまいましたが、だからこそ記念すべき第1回目に参加できたので、その感想をまとめたいと思います。

公認心理師とは

公認心理師」とは、2017年(平成29年)9月15日に施行された公認心理師法によって誕生した心理職としての国家資格です。

2018年9月に第1回の試験が実施されました(五十嵐も受験し、合格➡登録をして公認心理師となりました)。

それまでは、日本臨床心理士資格認定協会による「臨床心理士」が代表的でしたが、メンタルヘルスの重要性の高まりや様々なニーズ等により、国家資格が誕生しました。

日本公認心理師協会とは

日本公認心理師協会は、公認心理師の職能団体として設立されました。組織としての目的はホームページに以下のように書かれています。

一般社団法人日本公認心理師協会は、公認心理師が広く人々の心の健康の保持・増進に寄与することができるよう、その支援をすることを目的とする組織です。

 本協会は、心理支援を要する人や関係者に心理に関する相談及び助言、指導その他の援助を提供し、または心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行い、その生活の質の向上と社会参加を支援していくことを目的の一つとしています。

会員になると、以下のようなメリットがあります。

・会員証が発行されます。

メールマガジン(会員情報レター)が随時送付されます。

・研修会・大会等、自己研鑽の機会が得られます。

・本協会主催の研修会等に会員料金で参加できます。

・法制度の動きなどの最新情報が手に入ります。

・会員専用のホームページへアクセスできます。

・「求人情報・研修情報掲示板」の利用。

公認心理師賠償責任保険に自動加入。

・その他にも、役立つ、使える、ためになる、企画を準備中です。

今回参加した学術集会は、研修会・大会等、自己研鑽の機会が得られます。に当てはまりますね。

学術集会の感想

公認心理師ダイバーシティ

今回の学術集会のテーマが、「ダイバーシティ時代の公認心理師~今OKINAWAからはじめよう~」でした。

これは社会の多様化している中で、新たに誕生した公認心理師の職能団体の第1回目の学術集会のテーマとしてはピッタリだと思います。

多様化の時代のため、公認心理師が支援する個人や集団、組織も多様化しています。そのようなダイバーシティの時代で、公認心理師はどのように支援していくのかという視点なのだろうと思います。

しかし、この学術集会に参加してももう一方の視点での多様化も感じました。それは、公認心理師自体も多様化しているということです。

公認心理師が支援する対象は、学校での児童生徒や保護者、医療での患者、福祉での利用者さんだけでなく、トラウマや依存症、ゲーム障害などにも広がっています。また、一番最近で言うとCOVID-19関連での支援にも公認心理師の活動の幅が広がっていることを感じました。そのような多様な活動をしている公認心理師が1つの学術集会に集まって話を聞けるのは良かったです。

沖縄の映像を流したり、最後はみんなでカチャーシーを踊ったり、主催の方々の工夫でオンラインだけど沖縄の雰囲気が感じられました。

・オンデマンド配信

冒頭でも書きましたが、今回の学術集会はオンラインでの開催でした。リアルで行う場合は沖縄での開催であったため、その場合は参加していたかなぁ。多分参加していなかったと思います。場所に関係なく参加できるのはオンラインの良さですね。

また今回、オンデマンド配信が非常に多いです。今までの学会では同じ時間に複数の口演や発表が行われているので、あれも聞きたい、これも聞きたいけど、時間が被っているからどちらか1つしか聞けないということがありました。でも、オンデマンド配信があるので、いつでも好きな時に発表を見られるのはオンラインならではの良さですね。ただ、あまりにもオンデマンド配信が多いので、期限までに見終われるのか心配です。

オンラインにはオンラインの良さがありますが、やっぱり現地に行って、その土地の雰囲気を味わうという楽しみが出来ないのはちょっとつまらないですね。沖縄だったら、ソーキそばやラフテーゴーヤチャンプルー、紅芋アイスクリームなんか食べたかったな。

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今回は、第1回日本公認心理師学会学術集会へ参加した感想を書いてきました。今後、公認心理師や日本公認心理師協会がどのようになっていくのか楽しみです。

第2回の学術集会は現地に行って参加できる状況になっているといいのですね。