心理学ブログ

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ゲーム障害やネット依存などの依存を中心に、30代半ばの中堅公認心理師(臨床心理士)が心理学の知識や関連する話題などについて書いていきます

実態調査から考えるゲーム障害、ネット依存に対するカウンセリング

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ヤフーニュースを見ていたら、横浜市が小中学校の児童生徒を対象にゲーム障害・インターネット依存に関した実態調査を行ったとの記事がありました。

小中学生1割依存傾向「ゲームのことばかり考える」「ネットに夢中」(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

ヤフーニュースにはもちろん調査のほんの一部しか紹介されていないので、早速報告書そのものを読んでみましたので、その内容を紹介しつつ、カウンセラーとしての所感を書いていきたいと思います。

www.city.yokohama.lg.jp

横浜市立小中学校児童生徒に対するゲーム障害・ネット依存に関する実態調査

【調査の実施方法、調査対象】

 対象者は横浜市立の小・中学生 13,245 名。そのうち 4,164 名の回答が得られ、回収率31.4%。調査は、横浜市内 18 区でそれぞれ小学校、中学校1校ずつを抽出し、学校を通して児童生徒に依頼し、回収は郵送法によって行った。

【調査の結果】

ゲーム依存傾向の割合

  • 小学4年生から中学3年生全体でみると、ゲーム依存傾向のある児童生徒の割合は男子が16.6%、女子が7.9%
  • 女子よりも男子の方が高い傾向
  • 小学4年生、5年生で高くなる傾向

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ネット依存傾向の割合

  • 小学4年生から中学3年生全体でみると、ゲーム依存傾向のある児童生徒の割合は男子が11.1%、女子が9.2%
  • 男女とも中学2年生の割合が最も高い

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ゲーム依存傾向とゲーム、ネット利用状況、生活習慣、心の状態との関連

  • ゲーム使用時間、動画視聴時間が長く、フィルタリングが無い児童生徒ほど、ゲーム依存傾向の割合が高い。
  • 抑うつ症状が見られ、親にはいろいろ相談できると思わない、何でも話せる現実の友達がいると思わない、学校が楽しいと思わない、家ではホッとできると思わない、自分自身に満足していると思わない児童生徒ほど、ゲーム依存傾向の割合が高い。
  • ゲーム依存傾向は引きこもりや不登校との関連、親との関係悪化(特に父親)、抑うつ症状や注意欠如・多動症との関連が知られている。それらは、自己評価の低さや攻撃性、衝動性などとの関わりが見られる。

    ただしゲーム障害と攻撃性については「関連がある」とする先行研究と「関連がない」とする先行研究があるので注意が必要。

  • ゲーム依存傾向の予防及び回復においては「日頃から周りの人に相談できる関係づくり、学校が楽しいと思える居場所であること、家庭が安心できる場であること、自己肯定感がもてること」が大切。

  • ゲーム障害の予防及び回復には、ゲーム以外の活動を増やすことが大切。

  • ゲーム障害になると、ゲームをすることが楽しくてやっている(正の強化)というよりも、ゲームをやらないことの不快感から逃れるという負の強化でゲームを続けている可能性がある。

ネット依存傾向とゲーム、ネット利用状況、生活習慣、心の状態との関連

  • ゲーム使用時間、動画視聴時間が長く、フィルタリングが無い児童生徒ほど、ネット依存傾向の割合が高い。
  • 抑うつ症状があり、親にはいろいろ相談できると思わない、何でも話せる友達がいると思わない、学校が楽しいと思わない、家ではホッとできると思わない、自分自身に満足していると思わない児童生徒ほど、ネット依存傾向の割合が高い。

  • オンラインゲームの経験がある者やゲーム使用時間が長い者の方がネット依存傾向になりやすい。その一方で、動画の視聴時間やSNS利用時間が長いほどネット依存傾向になりやすい。

実態調査結果から考えられるゲーム障害、ネット依存に対してカウンセラーが思うこと

 このような大規模研究を行うには多大な時間と労力がかかります。その多大な時間と労力をかけて行われた調査の結果からゲーム障害やネット依存に対するカウンセリングに活用できることを考えてみました。

ご本人へのカウンセリング

  • 自己肯定感をもてる関わり

 ゲーム依存傾向の児童生徒には抑うつ症状が見られ、自分自身に満足していると思わないことが指摘されていて、ゲーム依存傾向の予防及び回復においては、自己肯定感がもてることの大切さが言われています。自己肯定感をもってもらえるように、ご本人の良い点やできている点のコンプリメントが、ゲーム依存傾向の児童生徒に関わる上では1つのポイントになりそうです。

  • 依存する要因の説明

 ゲーム依存やネット依存は自分がやりたいからやっていると、本人も思いがちですが、しかし、ゲームをやらないことの不快感から逃れるという負の強化でゲームを続けている可能性があることを知ると、本人も少し気が楽になるかもしれないと思いました。

ご家族へのカウンセリング

  • 依存する要因への理解を促す

 上でも書きましたが、ゲーム依存やネット依存は楽しいからしている、やりたいからやっていると家族も思いがちです。しかし、負の強化でゲームを続けている可能性があることを知ると、家族も子どもの見る目が変わるかもしれません。

  • フィルタリングやゲームの時間のルール決め

 これはすでに行っているご家族が多いとは思いますが、フィルタリングやゲームの使用時間をあらかじめ決めておくことが重要であるため、カウンセリングでもこの点についての説明が必要ですね。

  • ご家族の接し方

 ゲーム依存傾向の予防及び回復においては、「家庭が安心できる場であること」の重要性が指摘されています。子どもが安心できるような声かけ等について、ご家族と検討することも必要かもしれません。

まとめ

  • 横浜市が小中学校の児童生徒を対象に行ったゲーム障害・インターネット依存に関する実態調査についてまとめました
  • その実態調査の結果からカウンセリングで活用できそうなことを考えてみました

今回の内容に興味・関心を持たれた方は、良ければ、以下のサイトもご覧ください。

www.yamakioffice.com